なんかPCからキュルキュル異音がするなぁと思ったら窓から聞こえる虫の鳴き声でした。しょっかぁ、もうそんな季節かぁ……
ISAS系のロケット、1960年代末頃にGFRPを下段のモーターケースに使った例があるらしい? 空力荷重で破壊されて、その後はかなりの期間金属を使い続けていたらしい。下段は重量感度が低いから複合材料による軽量化のインセンティブが小さいし、ギリギリまで軽量化したい最上段になると当時の樹脂材料の信頼性ではチタンを使うのと大差がないので、結局モーターケースは金属製が良いみたいな話らしい。
K-9MのモーターケースがFRPを併用しているらしい。若干時期が合わないのと、あくまでも併用みたいな感じ。’76年の資料ではK-10でフィラメントワインディングのモーターケースを試作して良い成績を収めたとのことだが、この当時はK-10はすでに相当数が飛んでいるはず。「試作した」としか書かれていないということは量産には採用されなかったのかも。
別の資料では'72年にK-10#8の第2段にFW-FRPを使ったみたいな記述も。基本的には高単価を許容できる上段から順番にFRP化を試して、この時期に第2段まで、という感じなのかな? ただ、そうすると60年代末に下段(おそらく第1段)をFRP化したという話と合わない。それに、上段にチタンを使っているのとも合わない。
また別の資料だと、これは'68年末に書かれたものだけど、ロケットの望ましい構造として固体の第1段・第2段に液体の第3段と固体の第4段を組み合わせて、かつ第4段はフィラメントで作るのがいい、と書かれている。で、このフィラメントに関しては「ここ数年にわたって開発してきた材料」とのこと。この当時はフィラメント材料の下段への採用はあんまり考えられていなかったのかな? 最上段を固体にするのは、そのほうが構造比を小さくできるからであって、可能であれば最上段は液体であるほうが軌道投入精度の面で望ましいとのこと。今で言うイプシロンに近い構成がこの当時から望まれていたんだな。LEO(185km)に数百kgから1500kg程度の投入能力があれば、ペリジ/アポジモータを追加することで静止軌道に10-100kg級の衛星を投入できるとのこと。今の時代じゃ静止軌道に数十kgの衛星を置く意味も少ないけど、一応イプシロンロケットでも静止衛星が打てそう。この当時でも静止通信衛星は100kg程度がほしいという話だけど、そこまで強力なロケットがまだ無い(というかまだL-4S#5すら打上げていない)ので、まずは科学衛星を打てるロケットを開発して、それを使って静止軌道投入の経験を積みつつ大型のロケットを開発する、みたいな想定。この当時は実用衛星も自主開発の固体ロケットで打つ予定。
静止軌道上の超小型衛星は、今どきだと宇宙状況把握の話題で出てきそうな感はある。静止衛星にピギーバックしてGEOまで運んでもらって、GEOで10kg程度の衛星を分離し、衛星と静止衛星をレーザでリンクすれば、地上からはかなり気をつけて探さないと見つからないはず。衛星の片面を鏡面みたいに仕上げて地球に反射光が出ないように姿勢制御すればほとんど見えないだろうし、電波でリンクしないならRF帯の監視でも見えてこない。数km程度まで近づいて撮影するから光学系もそれほど大型なものは必要ない。欲しい人たちはほ欲しそう。/* 探してないので本当にそういう話があるのかは知らない */
ラムダロケットでは1/2段分離に成形炸薬を使っていたとのこと。ただ、L-4S#3の失敗の原因が、成形炸薬による過大な分離衝撃だった可能性もあったらしい。国内では爆薬の消費量が少ないので、爆薬の信頼性を確保するためにはある程度多めに使う必要があって、衝撃の低減には限界がある。ということで以降は機械的な分離を主に使うようになっていったそうだ。
NASDA系のロケットは輸入の火工品を使っていたはずだけど(と言うかロケットが輸入だからそうせざるを得なかったわけだけど)、アメリカでは爆薬の消費量が十分に確保できていたから爆薬の信頼性が高く、必要最小限の量で済んだから分離衝撃が許容範囲に収まっていた、みたいな可能性はあるか。NASDA系で国産火工品を使ったのは80年代中頃あたりのはずだから、その間15年ほどで品質管理もだいぶ改善しているだろうし。
日本の大型アンテナの最初期のものとしてUSC(旧KSC、当時東大生研)の1962年頃の18mアンテナらしいんだけど、調べてもほとんど出て来ない。ISASの2003年の資料でも、このアンテナに関する資料はほとんど残っていないというようなことが書かれている。このアンテナはEXOS-C('84年)のあたりまで使われていて、34mアンテナを建設するにあたって’97年に解体されたらしい。
コリメーション設備は6kmくらい離れた標高300mの場所に設置されていたけど、電波を出すためには麓のスイッチを操作する必要があって煩雑とのことで、レーザーを使ったリモートコントロール装置を作ったらしい(電波は周波数割当の問題がある)。科学衛星のコマンドとフォーマットを合わせて、アンサバックもあるらしい。おそらく60年代末か遅くとも70年代中頃の話だと思うんだけど。この当時から衛星向けのレーザテレコマみたいなことも考えていたんだろうか?
コリメーション設備は原文だと”視準塔”という風に書かれている。この時代の文章だと外来語は原文(英単語)で書かれていることも多いけど、変なところに日本語がついていたりする。もっとも、コリメータは例えば大砲の間接照準射撃で使ったりするから、これの日本語訳は古くから使われていた用語なのかもしれないけど(さすがに旧日本軍の砲撃システムは皆目見当がつかないので、実際にコリメータを使ってたかどうかは知らん)。
KDD20mアンテナは’65年頃に電波天文にも使われていたらしい。当時はまだミリ波天文学前夜といった頃合いで、観測していたのは数千Mc/sと衛星通信で使っていた帯域とほぼ同じだから流用しやすそうだ。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsass1969/26/299/26_299_618/_pdf
中程で少し18mアンテナにも触れているけど、KDDの茨城高萩アンテナ(20m)と時期が重なって、どちらも三菱電機なので共同で開発を行ったらしい。’61年にJPLを訪問した際にカセグレン型を知り、急遽KSCおよびKDDのアンテナをカセグレンに変更したとのこと。設計変更や建設を含めて1年位でやってるわけだから、かなり大急ぎで変更したんだな。
KSCは「世界で唯一の大学付属の人工衛星打上げ場」だそうだ。例えばPFRRはアラスカ大学の施設だけど、ここはサウンディングロケットがメインであって、軌道投入用のロケットは上がっていないはず。/* en.wikipedia曰く現在はPFRRがサウンディングロケットを含めて世界唯一の大学付属の打上げ施設らしい */
Von Braun博士曰く「Better is an Enemy of Good」だそうで、意訳すれば「"より良く"は敵だ」みたいな感じか。各サブシステムが各々勝手に改良しようとするとバランスが崩れる。システムとして成立しているなら下手にさわるな。改良するなら全体を見てやれ。
ロケットの分離では、アメリカ人に「あなた方はロケットを切り離しているのか、ロケットをぶっ壊しているのか」というジョークを言われたりしたそう(前述の衝撃の問題で)。
ja.wikipediaだとL-4Sは「非常に手の込んだ打ち上げ方式」と表現しているけど、この資料の中では「きわめて単純な打上げ方式である」だそうだ。あるいは、別の資料でも「最も簡単な飛行制御方式」と表現されている。どんな装置で制御していたのか知らないので完全に空想だけど、L-4Sの制御は結構シンプルそうな気がする。機械的な装置に初歩的なエレクトロニクスを組み合わせて成立させられそう。スピン安定のサウンディングロケットしか持っていない時代にとにかく早く軌道投入したいという要求に答えるならだいぶ良い方式のはず。
別の資料によると、カセグレン方式を電波に適用した最初の論文が出たのはアメリカの'60年1月で、口径4mだったそうだ。海のものとも山のものともわからないカセグレン式に望みをかけて一気に作り上げて、結局三菱電気は衛星通信アンテナで一時期は独占するほどのシェアを握るに至った。
当時は大型のアンテナはレドームに収めるのが一般的な方法だったらしい。精密機器なので、風雨にさらすことは避けたかった。茨城20mも軟式のレドーム(巨大なゴム風船)に入れていたけど、しばらくして割れてしまった。アンテナに損傷がないことは確認して翌日から通信実験を再開。で、レドームいらないんじゃね?みたいな話に。
このアンテナは設計値より特性が3dB程度悪くて、コリメータの近似が悪いんじゃないかということで電波星を使った校正を行った。ただ、当時の電波星の観測精度は非常に悪いので、3dBくらい簡単にずれるらしい。ということで、20mアンテナ自体の利得計測は人工衛星を使って計測された。これは利得が精度良く求まっているアンテナと比較することで行うが、カセグレンアンテナは副反射鏡の上に校正用のアンテナを乗せることができるので、この方法が使いやすかった(パラボラはなまじ開口率が高いので追加のアンテナを乗せるなら軸を外す必要があって、歪み等のリスクが大きそう)。20m鏡のキャリブレーション(&原因究明)が済んだので、続いて電波星の電波強度も計測し、世界中のアンテナでも同様に電波星を計測することで、多数のアンテナの利得を高精度に計測・比較できるようになった。そんなこんなで20mアンテナを電波天文学にも使おう、みたいな話になったわけか。
この当時の大型アンテナは今の大型アンテナとは違う雰囲気がある。レトロな風車と最近の風力発電の風車みたいな違い。現存するやつだとパークス64mとか。
M-4S#1は姿勢制御用の電磁弁(ロール制御用4個中1個)のオープン故障により軌道投入に失敗。詳細は省くとして、本来は姿勢制御を終了した段階で姿勢制御用電磁弁の電源を遮断するが、遮断以降も噴射が続いたため、機械的な故障と判断。
当該の弁は以前より多数使っていた弁のシリーズで、以前使っていたものは故障もなかったが、新しい弁でいきなり故障。分解したり色々調べて、どうやらこの弁は特性が悪いということで、以降は使わないようにした。また、ON/OFF波形を見ることで弁の健全性をある程度判定できる手法を開発。/* なお、ETS-VIIも軌道上で電磁弁のトラブルが発生し、後に地上で耐久試験を実施した際にON/OFF波形で異常の有無を判定 */
M-4S#1では早い段階からオープン故障し、他の弁によるトルクで相殺できていたが、制御を終了した段階で相殺でくなくなった。ということで、以降はH2O2供給ラインに遮断弁を入れて、機械的なオープン故障が発生しても制御終了時にトルクを遮断できるように。
ちょっと前(M-Vあたり)までのISAS系ロケットってバルブオープン故障許容の印象がある。ただ、例えばロール制御を故障許容で制御するには8個のバルブが欲しいから、M-4S#1時点ではバルブの故障許容設計はしてなさそうな雰囲気。この事故で「オープン故障も許容できそうじゃね?」という話になって、ロケット側の余力の向上に合わせて冗長系を追加していった感じなのかな。L-4Sの頃の無誘導の場合は軌道投入誤差を吸収するためにペイロードに割り当てる質量が少なかったけど、ロケットの誘導が行われるようになってくると打上げ能力にも余裕が出てくるから、冗長系は追加しやすそう。特に下段は感度が低いから、多少のペイロードを犠牲にしてバルブの故障を許容できるならそういう設計は有りそう。
M-4S#1打上げ失敗の日の夕方にはMS-T1が必要であるという結論に達し、諸々折衝の後に予備部品等をかき集めて作成。M-4S#2に搭載され打上げ。MS-T1には曲率8m程度、半径70mm程度の凸面鏡が6枚搭載されていて、光学観測で姿勢を推定できる。運用終了後に堂平で3回の撮影を行ったらしい。
EGSの鏡は曲率8.5mで20x20cmくらいの大きさ。曲率は輝度に、面積(+曲率)はパルス幅に、枚数はパルス周期に影響を与えるので、MS-T1とEGSは同じくらいの明るさで写るのかな。堂平には数年前にベーカーナンが移設されているから、それで撮影したのであろう。/* ベーカーナンのf500mm,F1.0,視野角30度、何度見てもヤバいスペックだ */
1970年代末頃のNASDAが16トン級の静止衛星を構想していたらしい。直径30mのUHFアンテナを2個使って移動体通信を行ったり、KuからKaまでの通信や放送を1機で担う大型の衛星。当時は各国で5-30トンのこの手の衛星が構想されていたらしい。LEOで組み立ててGEOへ運ぶ。LEOというのは有人の宇宙ステーションを想定していて、人間が組み立て等を行う。10年くらいのミッション期間を想定しているが、ミッション終了後にはLEOへ下ろして部品を交換した後に再びGEOへ持ち上げてミッションを行う。スペースシャトルの大量輸送時代を見据えて考えてたんやろなぁ。まぁ、当時はアメリカでは1辺数kmの発電衛星をGEOに置こうみたいなことを考えていたはずなので、それに比べれば直径30mが2個なんてのは可愛い方か。
古い資料だと質量単位にgrを使っている物があって、特にNASDAのその頃の資料だとヤード・ポンド法を使っていたりするのでだいぶ面倒くさい。常識的な物性なら15倍のスケールで判断できるとしても、火薬なんて常識の埒外だし。
気まぐれにGMS-5(H-II#3)のアポジキックのΔVを計算してみたり。計算というか、SGP4で速度ベクトルを持ってきて差の長さを取ってるだけだけど。ΔV1.71km/s(XY面1.59、Z軸0.635)、くらい? なんか、予想よりちょっと少ないな。
同じようにJDRS(H-IIA#43)を計算してみると、ΔV1.83km/s(XY面1.66、Z軸0.763)くらい。H-IIA高度化の資料で、非高度化打ちの際に必要なΔVが1.83km/sだそうだから、とりあえず計算は正しそう?
JDRSは軌道傾斜角28.4度程度に投入されている。GMS-5は同25.1度程度に投入されている。GMSは傾斜角が小さい分でΔVも小さいのかな。さすがにGMS-5のAKMのΔVの数値は見つけられなかった。GMS-5以降は日本の静止衛星ではAKMは使ってないんじゃないかな?
最近、生活リズムを90度くらい移相させている。ので、一日中眠い。ダブルパルスでパルス幅を移動して行く感じ。ただ、睡眠時間はジッターを含む離散値なのであまり効率はよくなさそう。パルス幅固定でパルス周期を変えて移動するほうが良さそう。それはそれでまた面倒なんだけど。
あと、生活リズムの問題なのか、季節の変わり目だからか、どこかバグってるんじゃないかというレベルで腹が減る。これが腹の虫ってやつか……
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