2018年12月24日月曜日

件のレーダー

 チャチャッとググって書きなぐった文章なので、でたらめなこと書いてあるかもよ!




 防衛省・自衛隊:韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について

 広開土大王級駆逐艦 - Wikipedia
 (以降KDX-1)

 搭載しているレーダー
 * AN/SPS-49
   2次元対空レーダー
 * MW-08
   3次元対空レーダー
 * AN/SPS-55
   2次元対水上レーダー
 * STIR-180
   多目的レーダー(3次元?)

 今回問題になっているのは、最後のSTIR-180だと思う。
 他にもゴールキーパーとかも積んでるんだが、今回は除外。

 STIRの製造元はタレスで、メーカーにカタログがある。
 Stir – Tracking and illumination radar | Thales Group

 STIRは1.2と2.4があり、それぞれ直径が1.2mと2.4mの違い。
 KDX-1に乗っているのはおそらく2.4の方。
 ちなみに、STIR 2.4のカタログの表面にある写真は、形からしてKDX-1で間違いないはず(煙突形状や埋込み型の16x Mk48ランチャー、STIRとゴールキーパーの配置、等)。

 カタログより
 "Track radar for gun and missile fire control. Its long range tracking and missile illumination performance support ship defense with Semi Active Homing missiles such as SM2."
 Track radarは追尾レーダー、fire controlは火器管制、illuminationは適当な邦訳が思い浮かばないので"イルミネーション"とでもしておこう。この内、今回問題になっているのは、防衛省のタイトルにもあるように"火器管制"の部分。

 ちなみに、他に検出レーダー(detection radar)、捜索レーダー(search radar)もある。使用順はdetection→search→track→fire control→illuminationの順番になる(装備や状況によって変わる)。
 KDX-1の場合は、detectionとsearchをSPS-49が、trackをMW-08とSTIR、fire controlとilluminationをSTRIが担っていると思われる。
 だいたい語感で用途もわかると思うけど、まず検出レーダーで「誰かいるか?」を判断し、捜索レーダーで「どのあたりにいるか?」を判断し、追尾レーダーで「どこに向かうか?」を判断し、火器管制レーダーで「どこを狙うか?」を判断し、イルミネーターで「ミサイルさん、ここに飛んでけー!」というふうな機能になる。
 最近では検出レーダーは使用しなかったり(検出と捜索が一つになってたり)、アクティブホーミングミサイルの場合はイルミネーターが不要だったりする。KDX-1は対空ミサイルとしてシースパローを使用しているから、これを発射する際はイルミネーターが必要になる。

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 カタログのmain featuresから抜粋するが、"Radar for gun and missile fire support against missiles, fighters and surface targets."という項目がある。
 "gun and missile"は「艦砲とミサイル」の意味。日本人的感覚からすると艦砲はガンって大きさじゃねーだろ、という気もするが、英語だと砲も含めてgunという表現になる。
 "missiles, fighters and surface targets"は、「対ミサイル、対戦闘機、対地上目標」みたいな意味だろうか。対ミサイルというのは対艦ミサイルからの防衛にも使える、ということかな。
 ここで重要なのは"surface"で、これが何を指しているのか、というのが問題になる。なんとなく、海面の意味じゃないかな、という気がする。上では対地上目標、と訳しているが、おそらく対水上目標にも使えるであろう。艦載砲の火器管制レーダーが水上艦を探知できないはずはない、という理由による。

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 ふたたび抜粋するが、"Long Range target detection and tracking thanks to large 2.4m antenna and high transmit power."という項目がある。
「おっきなアンテナとおっきな送信電力を生かして、長距離の検出(detection)と追尾(tracking)ができるよっ!」みたいな感じか。
 めっちゃdetectionって書いてあるね。。。たぶんdetectionとsearchをあわせてdetectionという表現になってるんだと思う。。。

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 ここで、先の"surface target"と、"long range target detection"を組み合わせてみると、「水上目標を長距離で検出できる」と読める。
「あれ?対空火器管制レーダーじゃなくて、対水上捜索レーダーっぽいぞ?じゃぁ、救難信号を発した漁船の捜索にも矛盾しない…?」

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 では、そのような運用をしていたと仮定して、なぜレーダーを発信した状態で航空機に向けたのか?

 またまた引用すると"EO facilities for target observation and identification. EO sensors available are TV and IR."という項目がある。
 このEOというのは"electro-optical"の意味で、「電気的な光学」の意味。「いやいや何言ってるんだ、カメラは例外なく電気的じゃないか」と思ったそこの貴方、子供の頃に潜望鏡作って遊びませんでした?(僕はやった記憶はないですが、工作の本で読んだ程度で)。電気使いましたか?ガルパンで西住隊長がキューポラから覗き込んでいるのも、鏡を使っている光学装置ですよね。
 それはさておき。

 "EO facilities for target observation and identification"は「対象の監視と確認のためにEO設備を使用できます」、"sensors available are TV and IR"は「テレビカメラとIRを使用できます」みたいな感じになる。IRというのは熱赤外線カメラ(いわゆるサーマルビジョン)。TVというのはまぁこの業界ではカラーカメラくらいの意味だろう。そもそも"テレビジョン"は「遠く(tele)を見る(vision)」みたいな意味だから、別の場所においたカメラからの視界を見る、という意味でTVというのは間違いじゃないはず。

 このSTIRは機能が豊富で、目標の探索から、火器管制から、ミサイルの誘導から、カメラでの確認から、とにかくいろんなことができる。
 であれば、「レーダーで漁船を探しながら、カメラで目視して確認する」という使い方ができる。
 そして、対空レーダーを見ている人が「飛行機が飛んでくるぞ!」と叫べば、STIRを使っている人は「それがどんな飛行機か」を見たくなるのが人情。
 捜索でピリピリしている時に「変な飛行機が飛んできた!」となれば、そっちを優先して確認してしまうだろう。そのときに、レーダーを切り忘れていたとしても、不思議ではない。なにしろ、ピリピリしている軍人がどんなことをしでかすかは歴史を見れば例がある。95年起工、00年就役の軍艦なら、「素晴らしく使いやすいユーザーインターフェース」とは言えないはず。ウッカリ発振停止をわすれた、位あってもおかしくない。

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 ネット記事の「火器管制レーダーを当てると、レーダーの情報が相手に筒抜けになるだけで、メリットはなにもない」という言い分には、ちょっと疑問が残る。
 STIRは結構数が出ているようだから、数分受信した(された)程度でどうこうなるようなものでもない気がする。
 それよりも、P-1をレーダーで細かく見られたほうが問題だと思う。
 ずーっと同じ位置を保っていたわけではないだろうから、P-1はいくつかの角度でSTIRのレーダーシグネチャを渡してしまったはず。その情報は対空レーダーが目標の同定を行うのに活用されるはず。
 P-1は純粋な哨戒機ではなく、いくつかのミサイルを発射できる、攻撃能力のある飛行機だから、P-1と敵対する危険性がある場合、できればP-1か否かを判断できる情報がほしいだろう。
 万が一、レーダーシグネチャの情報がたらい回しにされて他国へ漏れた場合(あるいはその他の場合でも)、その国が日本とドンパチをするときに「この飛行機はP-1だ!」と確定できれば、「こいつはミサイルを撃ってくるかもしれないぞ!」という判断の材料に使える。

 まぁ、それはスパイ映画の見過ぎとしても、「情報を相手に与えるだけで、自分が得るものはなにもない」と言い切ることはできない気がするな。

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 なお、このエントリは最初にも書いたとおり、チャチャッとググって出てきた情報を自分なりに噛み砕いただけで、何らかの意図を持って書いたものではない。唯一あるとすれば「暇だし調べてみよう」くらいのノリでしかない。それを、何らかの意図があるかのように曲解されるのは不本意である。
 いちおう、念の為、ね。

 それと、深夜のテンションでガーッと書きなぐってるので、間違いその他いろいろあるだろう。そういうときはそっと優しく教えてくれると、それはとっても嬉しいなって。さもないと絶望に染まってしまう。

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