2020年1月28日火曜日

小ネタ:レトロディレクティブ

 Retro-directive
 宇宙太陽発電(SSPS: Space Solar Power System)で使われる可能性のある技術。通信分野でも使われているらしい?

 レトロ(振り返る)ディレクティブ(指令)で、「搬送波を送り返す」みたいなシステム。
 要するに、送信相手からパイロット信号を送ってもらうと、その方向にビームを集中するシステム。

 回路的に実現したものがハードウェアレトロディレクティブ、非回路的に実現したものがソフトウェアレトロディレクティブ、と呼ばれるらしい。
 HWRDは応答性が高いのが利点らしいが、SWRDも応答速度が数秒周期ってことはないだろうし、大抵の用途ならSWRDで足りそうな気がする。元々は回路的にしか実現できなかったが、最近はDSP等の進化でソフト化に目処がついてきた、みたいな話なんじゃないだろうか。


 SSPSだと大電力のマイクロ波を当てるので、地上局にピンポイントにビームを向ける必要がある。レトロディレクティブなら地上局からの電波に対して自動で追尾できるので楽、みたいな感じらしい。
 そして、「ニセのパイロットビームを受信してしまうと、その方向にビームを向けてしまい、盗電されてしまう」という話が出てくるのが面白い。そうか、有線で接続してるんじゃないんだから盗電も無線でできる時代が来るわけだ……
 もちろん解決策も議論されていて、スペクトル拡散でビームを暗号化する、といった話がある。あと、スペクトル拡散だと時間をずらせば多重化できるので、複数方向にビームを分配できるらしい。
 ただ、情報通信や多重化と違うので、地上局が打ち上げるパイロット信号を横で傍受して、それを増幅して別の場所から送ってやれば、正しい拡散符号のパイロット信号を送信できてしまうので、単純にスペクトル拡散してやれば盗電が防げる、という話でもないはず。4万km離れた場所で受信できるパイロット信号なんだから、よほどしっかり絞り込んでシールドしてやらないと、数百km離れてても受信できそう。

 何らかの方法で盗電を検知したとしても、実際にSSPSが運用されれば、それは社会インフラとして必須の要素になるはずだから、盗電されてます、じゃぁ送電停止します、という話にはならないはず。かといって、レトロディレクティブは「このパイロット信号には応答しない」みたいなことができる柔軟性の高いシステムではないはずだから、盗電対策もままならない。
 パイロットビームの強度に応じて送信電力が分配されるようなシステムだと、全体の数%とかの少ない量を盗電されてしまうと空間損失とかと見分けるのも大変そう。移相量からビームを計算してモニタリングする、みたいな感じになるんだろうか。
 ビームの向きさえわかれば、少なくとも盗電グループが設置したパイロット信号送信機の場所は推定できる、というのは救いか。

 しかし、SFネタとしては、宇宙太陽発電+盗電は結構面白い話が書けそうな気がするな。
 例えば、テログループに拡散符号の情報が渡ってしまい、パイロット信号の発振器が作られてしまった。万が一首都に持ち込まれてしまうと自国の発電衛星で自国の中枢が攻撃されてしまう!どうやって阻止する!?みたいな話とか。
 

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