あけおめ! ことよろ!!
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モーレツ宇宙海賊が再放送だって? 新作の伏線か!? 原作厨としてはぜひとも原作準拠でリブートしてほしいところ…… 星間ガスの水素原子のように希薄な期待を込めて。
モーレツ宇宙海賊の放送開始からもう10年も経つんだな。
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アンディ・ウィアー長編作品、『火星の人』『アルテミス』に続く第3作、『プロジェクト・ヘイル・メアリー (上下)』を読んだ。ワトニーが帰ってきた!! いや、ワトニーが出てくるわけではないんだけど、やっぱりどうしてもワトニーが思い出される。少なくとも、『火星の人』と『アルテミス』では間違いなく前者に近い作風。
今作は火星の人と違って遠距離から通信で助けてもらう、みたいなシチュエーションがないので、そういう部分の創意工夫(例えばアポロ13で予備クルーが部品を集めて試行錯誤する)みたいな部分が見えてこないのが少し残念。だから今作はこういう文章の流れになっているんだろうけど、それが少し読みづらいと感じてしまうことがある。パートの区切りが少し分かりづらい(Kindleで読んでるからかもしれない)。映画化された際はそのあたりが綺麗にわかりやすくなりそう(まぁ、中身が減る分で相殺されそうだが)。
そうそう、この作品は映画化が決まっている!! 映画化された際に「俺もう原作読んじゃってるしなー。どうせ中身削られてるだろうしなー」とかマウント取りたいやつは今すぐ読め!! 面白いぞ!!!
今作は全体的にうっすらと野尻抱介作品感が感じられるかな。
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新年恒例、日本宇宙少年団の「ソラトビ手帳」が届いた。これ情報量ヤバいのでオススメ。単位換算表とかマジでヤバい。1分(約3ミリメートル)から1パーセク(約30兆km)までとか、ダイナミックレンジが凄まじい。その他諸々、情報量が非常に豊富。年会費たった3000円で毎年1冊送られてくる!!
毎年と言っても、実は去年(2021年)は発行されていなくて、2020年の手帳が2021年分も兼ねていた。で、この2020-21手帳、カレンダーは普通のカレンダー。一方、今年(2022年)のカレンダーは、1月0日からの経過日数がすべて書き込まれている!! これすごい。個人的にカレンダーに欲しい表記No.1なヤツ(そして大抵のカレンダーには書かれていない)。天体や衛星を計算したり、電波時計を扱ったりしようとすると、1月0日からの経過日数の表があるととても便利。
追記:本棚から2021年のソラトビ手帳が出てきた。どういうことだってばよ!? 2021年のカレンダーには1月0日からの経過日数が書いてあった(カレンダーの注釈には1月1日からの経過日数と書いてあるけど、1月1日が1であることから、あきらかに1月0日からの経過日数)。
次回発行分からは海上保安庁の天文歴データとかも併記しておいて欲しいなぁ。主要な天体(太陽系の大型天体や目立つ恒星)の位置(赤緯・赤経)を計算するためのパラメータとか、計算式とか。宇宙関係の教材だからネタとしては悪くない。それに小学生が読む教材に計算方法が書いてあって、まかりまちがって実際に計算する小学生が5人とか10人とか出てきたら、楽しいことになりそう。15年後くらいに大学で天体物理学とか教えてる先生たちの飲み会で「今年のウチの新入生はすごいぞ! 教えなくても太陽系や恒星の場所を自分で計算しちまうんだ!!」と自慢したら「実はウチにもそういう新入生がいて……」みたいに頭を悩ませる未来が来るかもしれない。
何を企んでいるかって? 「天体の位置計算の次は衛星の位置計算ですよね!」と言いくるめてCelestrakからTLEを引っ張ってきて衛星の見える方向を計算できる小学生を生み出すことだ!! だいぶ前にこのブログでも扱ったけど、衛星の見える方向を計算するのは、関数電卓が1個あればできる。順番さえ間違えなければポチポチ押していくだけなので、好奇心のあるヤツなら問題なく計算できるはず。さすがに暗算で計算するのは大変だし、一般的な電卓では厳しいけど、まぁ、最近のスマートフォンなら関数電卓入ってるだろうしね(iPad? ジョブズのせいで電卓自体入ってねぇよ)。スマホ使えるならそれで軌道計算できる? そんなことしたってつまらないだろ!!
ツィオルコフスキーの公式が書いてあるから、少なくとも自然対数を使う想定はしているはずで、自然対数が計算できる電卓で三角関数の計算ができないってことはないだろうから、衛星軌道の計算も可能なはず。
ソラトビ手帳、地球の科学の基礎的な部分がかなり網羅されているので、宇宙人にアブダクションされたときでも、この1冊を差し出せば手やわらかに相手してくれるはず。
裏表紙の17cmものさしに0から17までの連番がついているから、10進数を使っていて、その数字の割当がわかる。表紙には大きな文字が書いてあるから、こちら側が表だと推定できる。ページをめくっていくと下にページ数が書いてあって、これが100番台まで続いているから、10進数であることをほぼ確定させられる。
表紙の直後にカレンダーが書いてあるから、暦を推定できる(うるう年の処理はわからない)。4種類の記号(新月・上弦・満月・下弦)が決まった周期で出現するから、この惑星に大きな衛星が1個存在し、その軌道周期が推定できる。別のページに書かれている主要な惑星の一覧には、1個の衛星を持つ天体は一つしかなく、この文明が発生した惑星を示唆できる(「地球」という文字は、例えば「地球観測衛星」のように多くの場所で出現するので、「地球」という惑星が重要な天体であることにはいくつかの情報源がある)。
周期表が書いてあるから、各元素の名前が確定できる。別のページにはSI単位の定義が書いてあるから、セシウムと関連付けて時間単位が確定する。同時にメートルの定義から距離単位が確定する(宇宙関係の内容が多いからキロメートル毎秒みたいな単位が頻出するので、図等と組み合わせればそれぞれが距離と時間の長さであることが推定できるはず。別ページにはSI接頭辞の一覧もあるから、メートルとキロメートルの対応付も可能なはず)。
時間が確定すれば、軌道高度と軌道周期の表から、時間のルール(秒の60倍が分、分の60倍が時)を推定できる。世界各地の標準時が記載されているページには場所によって30分や15分の表記もあるから、時が15や30の倍数であることがほぼ確定できるし、同ページには経度も書いてあるから角度単位も推定できる。
惑星のページに地球の半径が書いてあるから、軌道高度と足せば軌道半径が求まり、軌道半径と軌道周期から地球質量が求まる。太陽系の天体は地球質量を単位として重さが書かれているが、これらもある程度確定する。
この冊子には運用中の衛星はある程度書かれているけど、運用が終わった衛星は書かれていない。数が多いからしょうがないけど、運用の終わった衛星も書かれていれば1976年2月29日に「うめ」が打上げられたと書かれていることによって「カレンダーには存在しない1日」が追加され、閏年の調整が示唆される。約1/4の確率でうるう年のカレンダーが研究に提供されて見逃される可能性があるが、そこは日本のカレンダーのありがたいところで、翌年の3ヶ月分のカレンダーも書いてあるから、年によって長さの違う月が存在する可能性を示唆できる。あとはコラムでうるう年の計算方法を書いておけば、ある日付に関する複雑な例外処理を示唆できる(これだけの情報量を持つこの冊子も、残念ながら閏年の計算は書いていない。おおむね、一般常識に類するような話題は書かれていない。当然といえば当然だが)。
もしも『星を継ぐもの』のルナリアンが、年会費たった3000円でもらえる手帳を持っていれば、学者連中があれほど苦労する必要はなく、言語学者が少し頑張るだけでたちどころに恒星系のシステムを把握できたはず。
ちなみに『星を継ぐもの』が書かれたのは1977年、秒がセシウム基準になったのは1967年。つまり小説が書かれるより先に物理量を基準にした時間単位が採用されている。これが小説に取り入れられていれば、ルナリアンやガニメアンの時間単位も物理量基準になって、地球でも簡単に解釈できるようになっていたはず。まぁ、今から見てるからそういうことを言えるわけで、当時は「10年前に変わったんだから近いうちに変わるはず(=他の文明で同様の基準が使われているとは限らない)」みたいな考えで却下されていた可能性はあるか。あと5年もすればまた変わる予定だし。ただ、例えば「時間単位はセシウムである」という記述があれば、「この科学文明はこのくらいの誤差を許容していた(これ以上精密な基準は運用できていなかった)」という指標になるので、話の広げ方は面白いはず。
とはいえ、ルナリアンの技術がある程度古いからこそ話が成立していたところもあるので、現代的な技術に則ると話の展開が難しくなってしまう可能性もある。例えばルナリアンが使っていた腕時計にカレンダーの機能があって、そのセグメントが物理的に別れていたから暦が確定した、みたいな話があったはずだけど(うろ覚え)、現代的に考えれば宇宙版Apple Watchみたいなものを身に着けているはずで、そうなると物理的な記号がなくなるから、電源OFF状態で表示を読み取ることができない。同様にメモ帳とかも全部電子機器にまとまってしまうはず。まぁ、ここ数年くらいだと有機ELの劣化具合とかが同様に使えそうではあるが。Flash ROMとかを読み出す技術があれば膨大なデータを得られるけど、それにしたってマイクロフィルムよりはマシ程度だし、今のFlash ROMが5万年後に情報を保持しているとも思えないし。いくら宇宙用のROMで、岩陰に隠れているとはいえ、ねぇ。そのあたりのデバイスは必要に応じて創作してしまってもいいんだろうけども。
結論:この1冊を持っているだけで宇宙人にアブダクションされたときに「コイツ知識持ってねーな」とポイ捨てされる危険性が激減するのでぜひとも肌身離さず持ち歩こう!!
/* 半年ほど前に話題に出したGEOTAIL、運用中と書いてある。JAXA監修の冊子に運用中と書いてあるんだから、運用しているんだろう。IKAROSも書かれているので信用度は微妙なところではあるが。JAXAとしてはIKAROSもいまだ運用中なんだろうか? */
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[イギリス工作機械産業の分析](https://core.ac.uk/download/pdf/233921247.pdf)
2003年の論文。一部はそれ以前の資料に基づいているので1990年代末前後の話。
Renishaw、プローブの世界シェアが80%だそうだ。曰く「イギリスの工場としては珍しく整理整頓され、清掃も行き届いていた」だそう。イギリス。。。まぁ、日本の町工場だって大抵は油で汚れた薄汚いイメージだしな。国に関わらずそういうものなのかな。
イギリスは熟練した作業員がいたために高性能な工作機械は求められず、修理も熟練工が行うために部品の共通化が遅れた。一方アメリカは熟練工が少なかったために誰でも使えて、誰もが同じ品質を作れる工作機械が求められ、広大な国土によって修理の必要が生じた際には部品の交換が必要であり、部品の規格化のためにさらに加工精度が求められた。これによりアメリカでは工作機械が発展し、イギリスでは発展しなかった。イギリスの工作機械は2000年頃では低価格帯な機種を製造しているが、アジア等の安価な機械が入ってくると太刀打ちできない可能性がある、とのこと。
発端はアメリカ独立の頃の話ではあるが、それ以降に発展した産業(自動車や航空宇宙)に強い影響を与えたことを想像するに難くない。たとえばフォードが車の大量生産を行えたのはエンジンの部品のように精度の求められる部品を大量生産できる機械が開発されていたからこそ。
ただし工作機械の発展では勝っていたアメリカも、戦後の航空機の高速化や宇宙開発の時代になってくると(低価格狙いのイギリスとは対象的に)高精度・高価格帯のNC工作機械に狙いを定め、その間にCNC制御機はFANUCがシェアを占めてしまった。
日本はCNC制御機で大きなシェアをもっているし、DMG(日独)やマザックのような企業もあるけど、一方でイギリスのような衰退をたどるような気もする。特に「職人技」と言ってる分野はほとんどがそうなるんじゃないだろうか。5年10年で切り替わるとは思えないけど、30年とか50年(技術者1世代)位あれば大部分が自動化されそうな気がする。
昨今の電子機器や光学機器の急速な発展で、計測技術があらゆる面(精度・速度・コスト・他)で飛躍的に改善しているから、職人の経験や勘に頼った精密加工はかなり自動化が進むはず。そういうデバイスがどこから出てくるかといえば、中国で作られるわけで、イギリスの工作機械がアメリカの工作機械に負けたように、アメリカのCNC制御器が日本のCNC制御器に負けたように、日本の機械加工技術も中国(またはその他の国)の技術進歩によって負けそうな気がする。精密な光学機器が一朝一夕に生まれてくることは不可能だけど、だからといって油断していい理由にはならない。
例えば望遠鏡をロボットで研磨する話題では点計測のレーザー変位計を複数並べて使っているけど、今なら面で計測できる変位計もあるようだし、データ数が増えてステッチングの手間が増えても、GPUみたいな膨大な計算を扱える技術もどんどん発展してるし、10年20年前ではできなかったことが簡単にできるようになる可能性がある。その流れは次の10年20年でも変わることはないはず。
日本みたいに研究の歴史があると、従来の延長線上で発展させている間に、他の国が全く違う発想で飛躍的に効率を上げてくる可能性がある。今までのようにメカニカルな部分の発展(&それを補助する電子機器)、という構図ではなく、ソフトウェア(&それを支える電子部品)の発展が機械の進化を推し進める場合、旧来のメカ設計に強みを持つメーカーでは太刀打ちできなくなる。これに関してはテスラが電気自動車で急速に発展しているのと同じような構図。工作機械だけじゃなく、自動車産業だって同じような構図になるだろうし、むしろエンジンのような強烈な環境で精度が求められる機械の使用が減る分で工作機械のパラダイムシフトが加速される可能性も高い。
/* アメリカ人がグリルを囲んで肉とかを焼いたりしてる光景、フォードが車を作る段階で出た廃木材を売るためにパッケージングして広めたヤツだけど、フォードが車を量産できたのは高性能な工作機械を使用できたからで、つまり三菱マシナリーが休日のたびにバーベキューグリルを作っているのは、歴史的に(途中をすっ飛ばしているけど)わりと正しいんだな。 */
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燃焼関連の話題を調べていて見つけた某重工のパンフ、社内で扱ってる幅広い業種を色々解説していて、シールドマシンの話題も書いてあるんだけど、曰く「機械本体を頑丈な外枠(盾)で覆っているのでシールドマシンと呼ばれる」みたいに書いてあって、なんかそれちゃうくない?って気がする。
最初期のシールドトンネルは1800年代初頭だそうだから、先にシールドトンネルがあって、それを掘る機械を作ったあとにシールドマシンという名前にしたんだと思うんだけど。
本とか読んでてもたまに「それちゃうくない?」ってのが出てくるのを見かけると、この程度でいいなら俺でも書けるんじゃね、とか思ってしまうので良くない。本職のライターの皆様にはぜひ頑張っていただきたい。
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前回、3Dプリンタが調子良かったので、試しに変なものを作ってみた。
ペンライトじゃないよ!!
艦載機を誘導する人が持ってるヤツ、みたなやつ。民間空港で言うところのマーシャラーに近い職種だけど、マーシャラーが持ってるワンドは普通の誘導棒と同じようなもの。おそらく一般的な空港は十分な照明があるからそれで問題ないのであろう。空母みたいに灯火管制が必要な場所では、普通の誘導棒を使うと水平に持ったときに右なのか左なのかわからなくなるので、円錐状の誘導棒を使う必要がある。
一般的にはこの部品は赤とかオレンジで着色されているけど、今回は白のフィラメントで作成。クリアオレンジのフィラメントとか使うと丁度いいかも。
先に作ったほう(左)はデフォルトの設定だけど、かなりデコボコ。右は速度を遅くしてみたら、だいぶ改善した。もっとも、角度の違いが効いているだけの可能性もあるけど。
根本の対数みたいな線はフィラメントの始点/終点の場所。製品として売ってる3Dプリンタは買って無調整でそれなりに造形できるので便利だけど、スライサーとかはあんまりよくない感じ。ソフトウェアアップデートは全く来ない。
下側のフチの少し上にある暗い線は、Y軸のバックラッシの影響によるもの。X軸は同様の痕は見えない。構造的な問題なのか、個体の問題なのか、このプリンタはY軸のバックラッシが大きい。
根元部分の構造
弾性で抱え込むような構造。本物のワンドであれば素材の弾性とか摩擦でキッチリ固定できるんだろうけど、PLAはそんなに柔軟な材料じゃない。
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風速計は特に進展なし。位相計測が、風力の計測には十分な精度でも、曖昧さの解決には更に高い精度が必要だと判明して、その解決に手間取ってる。STM32でハードウェア周りを低コストにPWMを出そうとするとソフトウェアがかなり複雑になってしまって、新しいアルゴリズムの実装とかが結構大変。最初は1軸しか使わないんだからDACとか使ってAWGっぽく実装するべきだったかも。それこそ先にAWG/簡易MSOを作ったほうがいいかもしれないな。。。いや、横道にそれるとろくでもないことになるんだが。
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