2017年12月23日土曜日

スタンダードミサイル

 他人の妄想に突っ込むのは野暮だと思うけど。

 スタンダードミサイルにはいくつかの種類があります。
 代表的なところでは、SM-1, SM-2, SM-3, SM-6です。それぞれサブモデルが存在し、場合によっては魔改造を受けて艦対空ミサイルから空対地ミサイル(性格には空対レーダーミサイル)にされた、というモデルもあります。が、今回は扱いません。

 SM-1はRIM-66 SM-1MRと、RIM-67 SM-1ERの2種類があります。同様に、SM-2はRIM-66 SM-2MRとRIM-67 SM-2ERの2種類があります。SM-3はRIM-161 SM-3、SM-6はRIM-174 SM ERAMの、それぞれ1種類ずつです。
 型番から分かる通り、SM-2はSM-1のサブモデルという扱いです。
 ではSM-1とSM-2は相互運用が可能かというと、そんなことはなく、SM-2は撃てるがSM-1は撃てない、というプラットフォームがあります。


 とりあえず先にMRとERの違いを説明しておきます。
 MRはMedium Rangeの略、ERはExtended Rangeの略で、それぞれ中距離、長距離の意味です(たいてい、ミサイルの最初か最後についてるERは長距離型の意味が多いです。SM-6ERAMのERも長距離の意味です)。
 基本的にMRもERも同じ弾体を使用しており、ERにはブースターが追加されている、という点が異なります。

Standard Missile

Standard Missile-2 on launcher, National Museum of Nuclear Science & History  

 この2枚の写真は、上がSM-2MR、下がSM-2ERです。ERのほうはMRの倍くらいの長さがあります。ERの後ろの青い部分がブースターで、これが付いていれば長距離型(ER)、なければ中距離型(MR)です。


 さて、SM-1とSM-2の違いについて。
 SM-1は全期間に渡り、セミアクティブレーダー誘導です。一方、SM-2は慣性/指令誘導による中間誘導と、セミアクティブレーダーによる終末誘導の組み合わせになります。
 全期間でセミアクティブによるロックオンが必要なSM-1では、ミサイルの発射前からロックオンしておく必要があります。そのため、発射する前からミサイルを目標へ指向しておく必要があります。これは、旧来の旋回式発射機では特に問題にはなりません。
 一方、SM-2は慣性誘導による中間誘導が追加されたため、「とりあえずこの方向へ飛んでいけ(ロックオンは後でやる)」という指示を与えるだけで発射することができます。この方式では、発射時にはロックオンする必要がない、というのが直接的な利点ですが、同時にミサイルを目標に指向しなくてもいいという利点があります。中間誘導の採用には同時に飛行できるミサイル数が増えるという利点もありますが、一番大きな利点は、この好きな方向に撃っておける、という点にあります。

 旋回式発射機は、発射前に目標に指向できるという利点がありますが、逆に目標に指向するまでの時間がかかるという欠点も生み出します。また、発射機は前甲板に1基、後甲板に1基、合わせて2基程度しかありません。万が一敵の攻撃(艦砲やミサイルの破片等)が発射機に命中した場合、その発射機が使用できなくなる危険があります。それでなくても、機械的なトラブルで攻撃力が半減、あるいは全滅といった事態になる危険性があります。
 これらの欠点を解決できるのが、Mk 41を始めとした垂直発射システム(VLS: Vertical Launch System)です。VLSであれば、ミサイル1発ごとに発射機1個が割り当てられている、と考えることができます。そのため、発射機1個が使えなくなっても、戦力の損失は100分の1程度に抑えることができます。また発射の指向が不要なので、準備ができ次第、次々と発射できます。他に、甲板上の発射機が無くなることによるステルス性の向上、セル(発射機)がカバーに覆われることにより被弾時の被害を抑えられる、といった利点もあります。
 もちろん、VLSにも欠点がないわけではありません。一番大きな欠点は、発射時はミサイルが上を向いており、発射時にはロックオンできない、という点です。この欠点は「発射前にロックオンが必要」というミサイルにのみ発生することであり、どの方向にでも撃てる(後からロックオンできる)慣性誘導を使用すれば、この欠点は存在しません。

 ということで、SM-2の中間誘導はVLSから発射するために作られた能力、とも言うことができます。もちろん、イルミネータの専有期間を減らして同時に発射できる弾数を増やす、飛翔経路を最適化して射程を延長する、といった利点もあるのですが。


 ここまで読んでくれば、「VLSからSM-1, SM-2, SM-3を撃てるようにしよう!」という「僕の考えた最強の戦闘艦」は実現不可能なことがわかると思います。もちろん、SM-1に中間誘導能力を追加すれば可能ですが、そんなことをするよりもSM-1を捨ててSM-2に絞ったほうが楽です(SM-1に中間誘導を追加したのがSM-2なのですから)。
 場合によっては、SM-2でも限定的ながら弾道ミサイル防衛が可能ですから、SM-3すらも捨てることもできます。まぁ、この場合はSM-6に一本化したほうがいいのですが。

 以上、SM-1とSM-2の違いとかの話でした。


 なお、上では書いていませんが、VLSの欠点は他にもあり、一旦真上に飛び出てから向きを変えるため、あまりに近い目標に対しては発射できない、という欠点があります。
 このため、RAM(Rolling Airframe Missile)は旋回式発射機を使用しています。一方で、同じ個艦防空に供されるESSMはVLSから発射されます。初期のRAMは最短射程0.8km、最大射程が9km程度だそうです。VLS方式に由来する最短射程は5km-10kmくらいかな、と思います。
 RAMは旋回式発射機に特有の、指向時間という問題がありますが、基本的にRAMは最後の砦であり、RAMの前にESSMやSM-2による迎撃を試みています。例えばSM-2で迎撃できずにESSMが必要になった場合は、RAMを使うことに備えて旋回を開始する、といった運用にすれば、ESSMの結果を待つ間に旋回を行えるはずです。
 高速な対艦ミサイルが低高度で接近してきた、という場合は旋回が間に合わない可能性もありますが、その場合はVLSから発射しても姿勢変更が間に合わない距離のはずです。

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 最強の戦闘艦を作るにはどんな装備があればいいか、というネタは面白いのですが、最近は複数の戦闘システムを組み合わせて能力を拡張する、という方向に発展しています。例えばSM-6では水平線以遠まで発射できますが、当然水平線の向こうはイージスのレーダーでも見えません。この場合、目標を探すにはE-2等からのデータリンクを使用します。そのため、SM-6の射程を活かすにはE-2のような観測手段が必要であり、E-2を運用するには陸上の飛行場か、洋上の航空母艦が必要になります。そうなると、戦艦○○にVLSを追加する、という話では済まなくなります。

「僕が考えた最強の戦闘艦」という妄想を行う場合、どういう制約を課すか、といった事も決める必要があります。例えば、「仮想装備も使える」という、いわば「現代兵器縛り」を外した場合、光速で攻撃できるレーザー(光学)兵器が最強の装備になってしまいます。攻撃されたことがわかるのは攻撃を食らってからですし、予防的な回避行動も意味ないのですから、光学兵器が最強なのは当然でしょう(ま、銀を蒸着するとかいろいろ対応はできますが)。
 逆に、「現在実用化された装備のみしか使えない」となった場合は、タイコンデロガ級やアーレイ・バーク級といった、現存する戦闘艦の中で一番強いのはどれか、という話になってしまいます。
「僕が考えた(ry」なので、このあたりはてきとーに縛ったり、緩めたり、自由にすればいいのですけども。。
 とはいえ、やはり「最強の戦闘艦」では、現在でも戦闘艦単艦では能力が不足している以上、単艦では「最強」とはいえなくなってしまいます。そうすると、最強の組み合わせは何になるか(空母にE-2を載せてタイコンデロガにSM-6とトマホークを満載、とか)みたいな話になってしまいます。
 面倒くさい。。。(by コンゴウ)

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 なお、ここに書いたことはwikipediaからてきとーに拾ってきて自分なりに咀嚼した情報なので、間違ってたらごめんなさい。(おまじない)

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