2017年12月23日土曜日

CIWS

 CIWS ファランクスの制御方式とか。

 ファランクスは戦闘機に搭載されていた、M61バルカン ガトリング砲をベースとして作られたシステム。バルカンの下に弾倉、上部に火器管制レーダー、更にその上に捜索用のレーダーが搭載されている。
 レーダーはどちらもKuバンド(12-18GHz / 25-16mm)帯を使用している。捜索レーダーは5.6km、追尾レーダーは4.3kmの探知距離と言われている。
 使用する弾薬は20x102mm弾を使用する。これは戦闘機に使用される一般的な種類。薬莢長こそ対物ライフルや重機関銃の12.7x99mm弾と近い大きさだが、弾丸の長さは倍程度の違いがあり、直径が大きいことから、装薬量も大幅に増やせる。
 ファランクスの銃口初速は1.1km/s程度、有効射程は1.5km程度。弾丸が最大射程まで到達するには1.7秒くらいか?

 ファランクスの制御は、クローズドループフィードバックで行われている。撃った弾丸をレーダーで追尾し、目標との差を計測し、それを補正した上で次の弾丸を発射する。
 この場合、弾丸の追尾の方法によって、制御分解能が変わる(レーダーの角分解能を無視する場合)。
 弾丸の未来予測を行わない場合、目標と同じ距離にある弾丸と目標の差と、その弾丸を発射した際の照準を使用し、次の射撃の諸元を得る。この場合、最大射程で撃つと、最初のフィードバックは1.5秒後くらいになる。ファランクスは毎秒75発以上を発射するから、最初の110発程度は無駄打ちになってしまう。
 弾丸の未来予測を行う場合、弾丸の未来位置はある程度物理法則に忠実だから、目標と同じ距離に達した際の位置を計算することができる。ある程度の距離を飛んだ時点で、例えば最遠500mとした場合、7割程度の性能改善が見込める。
 クローズドループではある程度の時定数が必要だから、無闇矢鱈と連射速度を上げればいい、というものでもない(VADSのように適当にバラけさせて撃つなら、高連射速度は意味があるかもしれないが、当のVADSもかなり発射レートを下げてるから、あんまり意味ないのかも)。

 ファランクスで200m/s程度の目標を迎撃する場合、射撃機会は7.5secほどになる。弾倉は20sec程度の容量だから、2-3回程度の迎撃で弾倉がカラになる(早い時点で迎撃を終了する、あるいはある程度接近してから迎撃を開始するなら、5-10回程度)。複数のファランクスを並べれば、飽和攻撃で撃ち漏らした目標を迎撃するのにはいいかもしれない。しかし、一時期はアーレイ・バーク級でもCIWSを減らしたこと、最近では飽和攻撃を食らう危険が減っていること、を考えると、あまりCIWSを増やしたところで、導入・維持コストがかかるばっかりになってしまう。


 前回のエントリでもちらっと書いたが、「最強の装備」を考える場合、ただ単に火器を増やせばいい、という話ではない。VLSを増やしたところで、レーダーやイルミネーターの性能が変わらなければ、飽和攻撃を食らった際の能力は変化しない。長射程のミサイルを追加したところで、それを観測する手段がなければ、宝の持ち腐れになる。
 また、あまりに過剰な装備の搭載は、初期コスト・運用コストの増大という結果を招く。コストを考えないなら、いくらでも自由に装備を追加すればいいが、そんなことをするなら「研究開発にコストを回せ(未来装備の実用化)」という話になってしまう。
 他にも、あまりに大きな火力を持つと、政治的な問題を引き起こす可能性もある。
 「最強の装備」を考えるときは、コストや政治的な面、用途や使用頻度、と言った点を踏まえ、また、本当にその重量を艦に搭載できるか、と言った点も考えてみると、面白いはず。もっとも、「そんなのは俺の勝手だ!」と、好きなように盛るのも、それは個人の自由なのだが。

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