2018年10月11日木曜日

ATCトランスポンダ

 興味本位で探してみたけど、いまいち理解できてない。
 わかりやすい資料とかあったら教えてください。


 トランスポンダは軍用が1,2,3,4,5で、民間用がA,C,Sになる。モード3とモードAは同じもの、モードCはモード3/Aの拡張、という感じらしい。モードSは軍民両用らしい。モード5はモードSの暗号化らしい。モードSを拡張したモードES(Enhanced Squitter)というのもある。
 モード5はモードSの暗号化のようだが、ただの暗号化だけじゃなく、スペクトラム拡散とかいろいろやってるんであろう。


 モード3/Aはスコークの応答、CはAに加えて気圧高度、SはCに加えて機体固有のIDが含まれる。ESではSに加えて位置情報や進路、上昇率を送信する。S/ESは定期的に送信(放送: Broadcast)される。ADS-Bはこれを利用しているからB。放送頻度はESで最大6.2Hz以下、Sで1Hz(±0.2Hz)の範囲らしい。ESの場合は通常4Hz、何かあったら6Hzまで増加可能、という感じだろうか。S/ESの0.2Hzはマージンの意味っぽい。
 ESは位置情報があるからBroadcastに意味があるけど、Sを放送する意味はなんだろうか? 「自分はこの空間に存在しているよ」以上の情報は送信できない気がする。それにESを受信すればSの情報は不要なはずだし。ESに非対応のTCASではSの放送を受信した後にその機体のアドレスを指定して質問し、C/Sで応答する、という感じだろうか?


 トランスポンダは空中衝突防止装置(TCAS)にも使われる。
 アンテナはある程度の指向性アンテナを複数内蔵しているので、どの方向からの応答かはおおよそ把握できる。応答を複数回受信し、自機と衝突しそうなコースである場合はその旨をパイロットに通知する。
 たぶんAはTCASには使用できない。
 C/S/ESでは気圧高度をやりとりするので、どれくらい上にいるかがわかるし、時系列で見れば上昇率も推測できる。
 ESであればGPSの位置情報と気圧高度、上昇率があるから、より細かく判断できるはず。


 で、S/ESの場合は機体固有の番号が含まれている(パリティ含めて24bit?)。この固有番号は機体のレジと1対1で登録されているらしい。
 この場合、機体にレジがなければモードS/ESの放送はできないのか? たぶんできない。レジがない機体はA/Cのみ、となるはず。もっとも、レジがない機体は飛行機としての飛行ができないし、日本ではわざわざホームビルドしてレジ取ろうなんて人はごく少数だろうし、レジが取れない物(e.g.熱気球)は航空機扱いじゃないし、それで問題ないんだろう。

 米国では2020年までにすべての飛行機がADS-B(モードES)に対応する必要があるらしい。米国の場合、ホームビルド機が多いようだ。が、それに比例するように、ホームビルド機でも比較的簡単に(実験機用の)レジの発行を受けることができるらしい。レジさえ得られればモードESの機材は搭載できるはず。
 ただ、例外もあるようで、ざっくり言えば「発電機がない機体は免除」ということらしい。グライダーとか、気球とか?
 トラポンの消費電力は20W程度だそうなので、リチウムイオンバッテリーで言えば1.5kg分位を載せておけば十分に1フライト分の給電はできるはず。でも充電の手間とか考えたら無しにしちゃったほうがいい、という判断だろうか。そもそも気球は最初から民間航路とは分離してるだろうし、グライダーのような積極的に山岳波を使う機体と民間機(ホームビルド動力機含む)の航路も分離されてるだろうし、そもそも衝突の危険が少ない、というのがあるのかも。


 モードESとは別の方法として、UAT(Universal Access Transceiver)という方法もある。低高度を飛ぶ小型機はUATを、高高度を飛行する場合はESを、という使い分けらしい。小型機向けとはいえ、978MHzを使うので、1090MHzとあんまり差がない。これくらいの差ならどっちでもコストは対して変わらない気がする。
 UATの978MHzというのは、DMEのch17Xに該当する。飛行中にDMEを17Xに設定しておけば、UATに対応した他の航空機が接近した場合、DMEにその機までの直線距離が表示されるので、定期的にDMEを確認しておいて、接近してきたら周辺確認を厳となす、みたいな運用なのかな? 僕の理解だとDMEってそんなに柔軟じゃないと思うんだが、近年のモノは柔軟に使えるのかも。
 UATを使う場合、質問の送信には既存のDME機材が使用できる点、応答の送信も質問の送信と同じような回路構成が使えるため、送受信機のコストが安く抑えられる、というのが小型機向けに普及した理由かも。


 日本では、だいぶ前(08年前後)の重気球(1t未満?)にもATCトランスポンダが搭載された例があるらしい。国内の実験用の気球ならもちろんレジは無いだろうから、AかCになるはず。その他にも、大気球にトラポンを乗せるのはよくあることらしい? ただ高高度を飛翔する場合は搭載できる重量が数kgしかないので、トラポンを乗せるのはつらそう。もっとも、50kmなんて高度には飛行機なんぞ一切いないわけだから、ミッション機材の重量に余裕のある、高度数kmから15km程度の実験にはトラポンを乗せる、という程度だろう。


 過去の事例では、エアロメヒコ航空498便空中衝突事故(1986年)では、DC-9と小型機が空中衝突したが、小型機にはAだけで、Cは搭載されていなかった模様。DC-9についてはトラポンについては書いていないが、"自動警報装置"(automatic warning systems)は搭載されていなかった模様。
 "この事故やターミナル・コントロール・エリア内で発生したその他のニアミス (near mid-air collisions, NMAC) の結果として、連邦航空局 (FAA) はアメリカの空域を飛行する全てのジェット機に空中衝突防止装置 (TCAS) を搭載すること、および混雑した空域を飛行する軽飛行機に高度を報告できる「モードC」トランスポンダを搭載することを義務付けた[11]"(ja.wikipediaより)とのことなので、衝突回避のためにはTCASが必要で、そのためにはモードCが必要、ということになるはず。小型機全てにTCASを装備するのは、当時は現実的ではなかったのかな。小型機にはTCASがないにしても、もう片方のTCASで回避するには、小型機からのモードCの応答が必須、ということなのだろう。片側だけでもTCASがあれば、衝突コースからの回避を提案できるので、なにもないよりはマシ、とのことなんだろう。


 モードSが制定されたのが1987年、ESが1998年、だそうで、モードSは先の事故の翌年には制定されているらしい。ただ、TCA内を飛ぶ小型機に必要なのはモードCだから、モードSの制定とこの事故ははあんまり関係ない気もする。

 87年ってまだ昭和なわけですが、その当時に1.09GHzのトラポンを載せようってのがすげーな。もっとも、イージスシステムを載せたタイコンデロガ級は1983年から就役しているわけだが。F-22はかろうじて平成生まれ。ATF計画も含めれば昭和だけど。平成生まれが思ってるほど昭和は昔じゃない。


 モードA/C/S/ESは1090MHzで応答するが、その信号は1MbpsのCWで返される。1ビットは1usecの長さだが、ビット1の場合は最初の0.5usecを送信し、後の0.5usecを送信しない。0の場合は逆で、最初の0.5usecは送信せず、後の0.5usecで送信する。
 ADS-Bデコーダのオプションで「パリティチェックに失敗したら0.5ビット動かして再試行」ってこういう意味だったのか。0.5bit動かしてどうなるの?と思っていたのだが、納得。
 モードSの場合は56bitかな? 1.09GHzを56usecの間、デューティー比50%で送信する。モードESは112usecで、6Hzで送信すると1秒あたり672usecを専有する。
 モードA/C/S/ESは最小200W、標準250Wで送信するらしい。もっとも、実際の送信出力はdBで規定されているようだが。最小200Wで送信するトラポンを使う場合は、200W入力で規定のdB以上を出せる利得のアンテナが必要になる。


 超大型ドローンとか、大気球とか、何らかの飛翔物体にトランスポンダを乗せる場合、法規制とかその他様々をクリアできたとして、おそらく日本ではA/Cしか載せられないはず。A/Cは位置情報を放送しないので、位置を知るには二次レーダーを運用する必要がある。
 Aの場合は高度情報が得られないので、ペンシルビームの二次レーダーが必要。Cの場合は高度情報が得られるので、ファンビームの二次レーダーでいい。

 今後、ドローンがますます普及した場合(←個人的には懐疑的だが)、何らかのトランスポンダーの搭載が必須になるかもしれない。トラポンとはいえ、ADS-Bのような運用を行うなら放送だけでいいので、機材としてはGPSと処理装置、アンテナの3点セットがあって、それを取り付ける、という形になるはず。
 海外で一定規模以上のドローンからの位置情報の放送が必須になった場合は、日本でもそれをコピーしたような規則ができるはず。その場合、ドローンの位置情報は航空機でも受信できる必要があるはず。ただ、モードESではアドレスが足りないはずなので、アドレスを拡張した、拡張ESを作る必要がある。ただ、その場合は既存の機材との互換性がないから、かなり微妙。既存の機材との互換性を維持するならモードCしかないが、そうすると放送ではなく応答になるので、ドローン側に求められる能力が高くなる。もっとも、今の電子技術ならそれほど大変ではないのかもしれないが。
 ESが使えればそれが一番いいと思うが、いかんせんアドレスが足りないのが問題。
 もしくは、ドローンはADS-Bの受信のみを行い、自分がコリジョンコースにいる場合は問答無用で移動させる、みたいな運用もアリかもしれない。そもそもドローンを空路に入れるなという大前提があるし、空路に入れるならちゃんとNOTAM出しとけ、という話なので、ドローン側の事情は一切酌量しない、という運用。

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 サクッと探した限りでは、あんまり詳しい話が見つからなかった。ちょっと消化不良な感じ。


追記:2018/10/16
 そういえば、DMEには質問1027MHz/応答1090MHzのチャンネルがあるけど、モード3/Aはこれとなにか関係あるんだろうか?
 UATはDMEの機材を流用できたので小型機に乗せられる程度に低価格化できたかも、という予想を書いたけど、モード3/AもDMEとほぼ同じ周波数だから、この説は説得力が低いな。周波数帯が同じならモード3/AやADS-BもUATと同じように低価格化できるはず。
 UATは測距だけなのでDMEとほぼ同じ機材で、モード3/Aはスコークの返事がある分複雑で高価格化、という感じなんだろうか?

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