2018年11月22日木曜日

ミサイルのカラーバンド

 "石川潤一の軍用機ウエポン事典"を読んでいたらカラーバンドのとかの話が書いてあった。
 昔ペーパークラフトで作ろうとして「写真によって色が違うけどどーなってんじゃ!」と書いたやつ。

 P82に記載がある。

 これによると、FS595a/bという規格らしい。
 FSはFederal Standardの略で、「連邦標準」の意味らしい。アメリカ合衆国連邦政府(Federal government of the United States)が策定した標準規格、ってことなんだろう。

 ちなみに、FS595は2017年2月に廃止されて、SEA-AMS-STD-595に移行したらしい。

 SEAは"自動車技術者協会"の意味で、"Society of Automotive Engineers"の略らしい。
 AMSは"Aerospace Material Specifications"の略とのこと。

 SEAの日本語訳は国立国会図書館のページに書いてあるが、AMSの訳は書いてなかった。直訳すると"航空宇宙材料の仕様"となる(Google翻訳)。

 自動車技術者が航空宇宙もやってるのかぁ。。

 FS595からSEA-AMS-STD-595になったのは、RS-232がEIA-232になったのと同じようなもんだろう。


 廃止になったFS595だが、ドキュメントはダウンロードできる。
 ASSIST-QuickSearch Document Details

 内容はカラーチップの大きさとか、運用の注意事項とか。
 「カラーチップは定期的に交換しろ、直接触るな、化学薬品にさらすな、紫外線を当てるな。冷暗所に保管しろ。複製はするな」みたいなことが書いてあるっぽい。
 関白宣言かよ。

 ちなみに、カラーチップは製造から3年以内に交換し、メーカーによっては2年以内の交換を求めているところもある、らしい。めっちゃ厳しい。

 カラーチップは692個の個別のチップ(3x5in(=76.2x127mm))で約900USD単語帳みたいな形?で175USD、3x5inの単色で35USD、とのことらしい。1枚35USDが700枚で900USDは計算に合わないので、1枚じゃなくて何枚かのセットかも。あるいはまとめて買うとめっちゃ安いのか。


 で、ミサイルのカラーバンドの話に戻るわけだが、黄(弾頭)はFS33538、茶(推薬)はFS30118、青(イナート)はFS35109、とのこと。
 この型番のフォーマット見たことある!と思ったら、プラモデルの塗料だった。なるほど。プラモデルの塗料を売るときに米国の色標準の型番をそのまま商品名にしてるのか。

 Federal StandardのPDFのAppendix II/IVに各色の詳細が書いてあるが、標準光源A, C, F2, D65で書いてあって、他に60°glossとか色のグループ、色の名前、といったことも書いてある。
 60°glossというのは表面に対して垂直から60度(表面から30度起きたところ)から光を当て、反対側の60度のところで何%の光を受けれるか、という基準。前方散乱で、光沢の基準だと思う。

 色番号のうち、最初の桁は1が光沢(反射率80以上)、2が半光沢(30から45)、1が非光沢(6以下)、とのこと。
 また、2桁目は色のグループを示し、0から8まで順番に、0:茶、1:赤、2:橙、3:黄、4:緑、5:青、6:灰、7:その他(黒、白、金、銀、紫)、8:蛍光、とのこと。
 弾頭は33なので非光沢の黄、推薬は30で茶、イナートは35で青、という感じ。


 前述の通り、色は各標準光源のものが書いてある。
 標準光源Aはタングステンの白熱電灯、CはAにフィルタを通して、平均的な日光を再現、D65は昼間の日光、F系は分子のスペクトル? とのこと。
 たぶんAから順番に出てきた規格なんだろう。D65は6500Kの黒体放射に近い(近い、であって、同じ、ではない。規格が制定されたあとに物理定数の変更があって変わってしまったとのこと)。
 ちなみにAからFまでは順当に増えているが、次はLまで飛ぶ予定らしい。LED関係なんだそうだ。

File:Planckian-locus.png - Wikipedia

 図の中にA, C, E, D50, D55, D65のマーカーがあるが、これが各標準光源のホワイトポイントの位置。Aは白熱灯なので、黄色っぽいところにある。CやD65は日中の色を目安にしてるので、青白い感じ。D65って6000Kと7000Kの中間じゃないんかい!!


File:CIExy1931 AdobeRGB.png - Wikipedia

 D65色空間だけどゆるして! Cは見つからなかった。

 FS33538(弾頭のオレンジ)はX55.59%, Y50.09%, Z6.93%で、xyYに変換するとx0.49, y0.45,Y0.50あたりになる。上の図から拾うと、580nmの少し内側で、輝度が50%、となる。
 FS30118(推薬の茶)はX11.34, Y11.17, Z6.84で、x0.39, y0.38, Y0.11となり、ブラウンと言うよりは、かなり暗い黄色、という感じ。
 FS35109(イナートの青)はX9.86, Y11.38, Z21.29で、x0.23, y0.27, Y0.11となり、暗い水色、という感じ。
 もっとも、これはD65光源からのピックアップで、上記のXYZはC光源の値なので、多少の違いはあるだろうが。


 ということで、ミサイルのカラーバンドの色は「すっげーキッチリ決められてる」ということがわかった。想像以上に厳しい。
 でもこの値をRGBに変換して印刷したところで、その色が本当にFSで規定されてる色とは限らないからなぁ。完璧にその色がほしいならSAE-AMS-STD-595のカラーチップを買わなきゃいけないんだが、10万って無理ゲー。まぁ、雰囲気だけですから、大体でいいんです。。。


 このエントリに書くことを調べるだけでまた新しい知識を得られた。世の中知らないことばかりなり。ボーッと生きてるなぁ。


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