2019年1月22日火曜日

ISARA

 [Integrated Solar Array and Reflectarray Antenna (ISARA) | NASA](https://www.nasa.gov/directorates/spacetech/small_spacecraft/isara_project.html)

 キューブサットに展開型のソーラーパドルを設置し、そのパドルの裏面をアンテナのリフレクタ(反射器)として使う、というもの。
 単純に反射させるだけでは位相が合わないから、うまいことやってるんだろう。
 この方式を使うとなると周波数帯はかなり高いところのはずだから、パドルの展開精度もかなり厳しくなるはず。


 「各素子で位相を固定した、パッシブフェーズドアレイレーダー」のようなイメージなのかもしれない。
 パトリオットミサイルのレーダーは、輻射器から電波を出して、それを間にある移相器で受信し、必要に応じて遅延し、反対側から再輻射するような構造になっている(らしい。これを吹付け型と言うそうだ)。コイツの場合は移相器の裏から電波を入れて表から出す(受信する場合はその逆)という流れだが、ISARAの場合は表面から入った電波を遅延したあと、再び表面から放射する、という感じになるはず。

 画像検索してみると、様々な大きさのパッチアンテナが並んでいるだけっぽい。大きさが変わると再輻射までの位相が変わるのかな? 周波数依存が高そうな気もするが、まぁ電波割当を受けた以上周波数を変えることはないだろうから、大した問題じゃないか。

 ISARAは衛星の地球側端のアンテナから、反対側のパネルの裏面に反射させるわけだけど、パネル自体に放射器を置いてもいいような気がする。
 かつてのディスクリート通信機だとパネルに無線機を乗せるのは難しいかもしれないが、今後はパネルに無線機を埋め込んで、直接輻射できるようになるかもしれない。

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 ISARAの場合、ビーム方向は固定だから、地上局と通信を行っている際は発電効率が悪くなる。地上局に指向するのが前提の衛星だから、姿勢制御を使えば、撮影するときに長焦点距離のカメラを目標に向けることができる。撮影する場合、最低限日照があることが前提となる(熱赤外は別だが)。その場合、撮影中は発電効率が悪化するはず。「太陽を背にして発電効率が最大の状態で撮影する」という運用も不可能ではないが、その場合は地上の影を撮影できなくなる。用途によっては問題ないだろうが、影を撮りたい需要もある程度あるだろうし。
 電源を最優先で検討し、空き時間で撮影し、夜間にダウンリンクする、という運用だろうか。

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 100Mbpsが出たとして、地上局との通信が5分x3回とすると、1日で8Gbyte程度をダウンリンクできる。5Gbyteくらいが目安か。写真1枚10MBとして500枚くらいダウンリンクできるかな?
 日本や米国等、経度方向にうまいこと散らして地上局を複数設置できれば、通信量をある程度改善できる。それで1日2千枚程度。コンステレーションで10機飛ばせば1万枚程度、かなぁ。
 1日1万枚というと相当な枚数だけど、全地球規模で見たら相当少ないと思う。1枚で5km角を撮影したとして、地球全域の森林を撮影するには160日かかる。全地球の森林を撮影しようとすると、1年に2回しか撮影できない。まぁ、全球の森林の撮影が目的なら衛星100機飛ばして2週間に1回、くらいで運用してもいいし、1日1万枚ならそれなりの対象を撮るだろうし。
 衛星のコンステレーションをやるなら、データ処理も自動化する必要がある。幸いにして今は深層学習が活発だから、画像の領域に「森林」「地面」「雲」といった分類を行い、時系列で見て森林→地面の変化があったら伐採されたと判断する、みたいな処理は自動化できるはず。森に限らず、駐車場にある車の台数をカウントする学習や、石油タンクの備蓄量を推定する学習もできるだろうし、これなら膨大な面積を撮影する必要もない。

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 しかしまぁ、最近の日本のキューブサットは成功率が低すぎやしねーか、とちょっと心配。打ち上げ済みの衛星のオフィシャルサイトが「近日打ち上げ予定!」とか「Coming Soon」とかだったりすると流石に呆れる。

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