2019年3月16日土曜日

ひまわり8/9号

 [気象衛星センター技術報告特別号(2016)ひまわり8号及び9号の地上システム総合報告](https://www.data.jma.go.jp/mscweb/technotes/msctechrep_sp2016.pdf)

 2016年3月

 かなり長い。

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 PDFの内容
1.静止気象衛星ひまわり 8 号及び 9 号の地上システムについて
2.静止気象衛星ひまわり 8 号及び 9 号の概要
3.HOPE 地上システム
4.静止気象衛星画像作成システム
5.領域観測予約システム
6.インターネット等による静止気象衛星画像データ配信サービス(HimawariCloud)の概要
7.商用通信衛星による静止気象衛星画像データ配信サービス(HimawariCast)の概要

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1.静止気象衛星ひまわり 8 号及び 9 号の地上システムについて

 ひまわり8号/9号では衛星本体の運用等は「気象衛星ひまわり運用事業株式会社(HOPE)」が行う。
 H8/9では観測データ等の伝送にKu帯を使うが、降雨減衰が大きいため、受信局を地理的に離れた場所に設置して受信できる確率を上げる。埼玉県鳩山町と北海道江別市の2箇所。800kmほど離れている。
 データ処理も、東京清瀬市の気象衛星センターと、大規模災害時には大阪管区気象台でも処理が行えるように冗長化。
 従来のひまわりは、衛星から直接他の利用者への配信を行っていたが、H8/9では直接配信を行う機能はないため、インターネット/商用通信衛星を介して配信。
 
 2ページ目、図1、ひまわり8号及び9号の地上システム

 2ページ目、略語集。GSS, HOPE, MTSAT, RDACS。

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2.静止気象衛星ひまわり 8 号及び 9 号の概要

 ひまわり8号は2015年7月7日に運用開始。9号は軌道上でバックアップとして待機運用の予定。

 H8/9では性能が飛躍的に向上した可視赤外放射系(Advanced Himawari Imager: AHI)が搭載されている。
 3ページ目、図1、H8/9の外観図。

 4ページ目、表1、H8/9の主要諸元。
 3軸姿勢制御の静止衛星。バイアスモーメンタム。
 東経140.7度。東西南北共に±0.1度。ひまわり8/9とも同じ軌道だが、東西に0.05度分離。
 打ち上げ重量約3450kg。ドライ約1290kg。推薬約2160kg。
 設計寿命はバスが15年、ミッション機器が7年(軌道上試験や待機観測を含めれば8年)。
 米国製AHI、重量338kg。
 可視3バンド、近赤外3バンド、赤外10バンド。分解能は0.5kmから2km(バンドによる)。
 通信系。DCP(アップリンク)に400MHz帯。TC&RにKu帯。AHI/DCP(ダウンリンク)にKa帯。
 衛星バスにDS2000(MELCO)の改良型。

 10分間でフルディスク観測を1回、日本域を4回(約2.5分間隔)、機動観測を4回(約2.5分間隔)、ランドマーク観測を20回(約30秒間隔)、で実施。
 15年に渡る期間、継続して運用する必要があるため、8号と9号で2機体制を確立。どちらかでトラブルが生じた場合でも運用を継続。
 通常は1機がAHIによる観測とDCP中継を行い、もう1機はAHI/DCPを休止した待機状態とし、運用側に不具合が生じた場合は待機側の運用を再開。
 観測を切り替えた場合でも運用を継続できるように2機をほぼ同じ軌道位置に配置。
 通信は、TC&Rは異なる周波数、AHIは異なる偏波面で分離。

 待機側は、ミッション機器の状態確認等を目的に半年間隔で2週間程度稼働させる。

 地上局は、主局アンテナサイト(埼玉県鳩山町)と副局アンテナサイト(北海道江別市)に、十分な距離を隔てて配置することにより、耐災害性と耐降雨減衰を高めた構成。

 ミッション機器やバス機器。2液推進系とか。

 5ページ目、図2/図3、AHIの外観とか諸元。
 重量338kg、平均450W、最大600W、5秒平均で66.6Mbps。

 米国の次期静止気象衛星GOES-Rに搭載予定のABI(Advanced Baseline Imager)をベースに、変更を加えて作成したもの。
 16バンドで観測できる。
 空間分解能は従来の2倍、フルディスク観測の時間は30分から10分に改善。きめ細かい情報の取得が可能。

 AHIとABIの違い。ABIでは赤外線に割り当てられたバンドを1箇所可視光に移動。これにより可視光のRGB3波長が計測できるようになり、カラー画像(True Color)を作成可能になった。
 6ページ目、表2、H8/9とH6/7とGOES-Rの観測バンド、それと衛星直下の分解能。
 6ページ目、表3、H8/9とH6/7とGOES-Rの比較。

 7ページ目、図4/図5、観測スペクトル。

 8ページ目、AHIの説明とか。
 8ページ目、図6、AHIの光路図。
 VNIR(Visble/Near IR), Mid Wave IR, Long Wave IRの3種類の焦点面モジュール。同じタイミングで観測しても、バンドごととに位置が異なる。

 9ページ目、図7、AHIの焦点面の構成。各バンドが東西に並んでいる。それぞれのバンドは主系(Side1)/従系(Side2)が東西に並んでいる。
 9ページ目、図8、各バンドの検出素子。バンド1-3は3個、バンド4-16は6個の素子が東西に並んでいる(それが主従で2組)。地上での試験で一番特性が良い素子を選んでマッピング、それを使用して観測。軌道上でも校正/再配置が可能。右側の青や緑のマス目、青が観測に使う素子、緑が観測に使える素子、白が観測には使えない素子、のイメージ。

 AHIではすべての赤外線バンドで空間分解能が2km以下に向上。可視はバンド3(赤)では0.5kmに向上。
 時間分解能(観測頻度)も、ひまわり7号の30分から、H8/9では10分に短縮。

 10ページ目、表4、AHIの観測種別。
 10分を1単位とし、その間に各領域を特定回数観測する。
 フルディスクは1回/10分。衛星から見える地球の全範囲を観測。
 領域1/2は4回/10分。東西2000km x 南北1000kmの範囲を観測。日本の北東領域と南西領域を約2.5分毎に観測。
 領域3は4回/10分。東西南北1000kmの範囲を観測。台風や低気圧、火山といった特定の対象を機動観測。
 領域4/5は20回/10分。東西1000km x 南北500kmの範囲を観測。ランドマークや積乱雲等を約30秒毎に観測。

 10ページ目、図9、スキャンミラーの構造。

 10ページ目、図10、全球走査範囲の例。赤はAHIの視野。青(隣接した円の外側)はフルディスク観測の範囲。緑(隣接した円の内側)は地球の大きさ。黒帯はフルディスク観測時のスワス。南北を23分割して観測する。

 ランドマークの観測は、海岸のような特徴的な領域を観測することにより、予測位置と実際の位置から、観測範囲の誤差を補正するために使う。将来的に、誤差が十分小さくなれば、積乱雲の観測とかへ利用可能。30秒間隔で撮影できるので発達が早い現象も高頻度に撮影できる。

 観測スケジュール。予め設定したパターンで撮影。10分を1区切りとする。
 定常観測。フルディスクや領域1-5をすべて観測する。
 ハウスキーピング観測。定常観測からフルディスク観測を除いたパターン。軌道制御やアンローディングを行う際はフルディスク観測は行わない。領域観測等は実施。
 太陽校正。太陽を光源として観測機器を校正する。月2回程度実施。HK観測に太陽の観測を追加した感じ?
 月・深宇宙観測。領域5を月・深宇宙に対して行う。定常観測、HK観測、太陽校正観測にて月・深宇宙観測が可能。

 12ページ目、図11、定常観測タイムラインとHK観測タイムラインの例。
 定常観測の場合は、フルディスク観測を行いつつ、各スワスの間に領域観測も行う。フルディスクはスワス毎に観測にかかる時間が変わるため、領域観測のタイミングも正確に30秒毎とか2.5分毎にはならない。
 HK観測はスラスタを吹いたりするので、姿勢が乱れやすい? フルディスク観測を行わず、空いた時間(およそ15秒程度)の間にスラスタを吹いて、領域観測は通常通り実施、という感じ。
 たぶんx-y[-z]の、zは領域1と2でのスワス番号、というのは、領域1と2と3での、の間違い。領域1/2はスワス4個なので、1-2の範囲ではなく、1-4の範囲になるはず(領域3は1-2の範囲)。

 13ページ目、宇宙環境データ取得装置(SEDA)。
 13ページ目、図12、SEDAの外観。
 13ページ目、表6、SEDAで取得するデータ。
 陽子線・電子線を計測。

 13ページ目、通信系。
 13ページ目、表7、バンドとか用途とか。
 UHF(400MHz帯)、通報局データの収集。Ku(12-14GHz帯)、TC&R。Ka(18GHz)帯、AHIデータや通報局データの伝送。

 H8/9のKaバンドアンテナは送信部が2組あり、鳩山局と江別局に別々に伝送できる。

 通報局(DCP)は、船舶や離島といった伝送手段が少ない局からの気象データや震度計データなどを伝送する。UHF(400MHz帯)で受信し、Kaバンドで地上局へ送信する。
 DCPの受信範囲は地球画像の取得を行っている全範囲(フルディスク?)をカバーしており、地上への送信はAHIのデータを送信するKaバンドと共有。
 通報局中継はこれまでのひまわりシリーズでも行われており、H8/9でも継続して実施。

 TC&R(テレメトリ、コマンド、レンジング)はKuバンド(12-14GHz)を使用。
 衛星内部ではMIL-STD-1553BまたはSpaceWire等のデータバスを経由して処理。
 テレコマはCCSDS勧告に従っている。レンジングに関しては記載なし。

 衛星制御系。1553BやSpaceWire等を経由。
 姿勢・軌道制御系、データハンドリング、衛星管理。

 電源系。日照時は太陽電池パドルから、日陰時はバッテリから。バッテリは50Ahのリチウムイオン(セル数は記載なし)。

 太陽電池パドル系。2枚のパドルで2250W以上の南面1翼構造(南側にのみパドルをつけて、パドルは2分割、という意味)。

 姿勢・軌道制御系。精度良く観測を行うためには、精度良く姿勢を制御する必要がある。
 スタートラッカ(STT)と慣性基準装置(IRU)で姿勢決定。リアクションホイール(RWA)とスラスタで姿勢制御。
 ひまわり6,7ではアースセンサを使用。STTを使うことで精度向上。IRUはひまわり7号と同等。
 RWAは角運動量が蓄積していくので、定期的にアンローディング運用が必要。スラスタを吹くので姿勢が大きく動き、画像に影響を及ぼす可能性がある。決まった時間(0240UTCと1440UTC)にアンローディングを許可し、この時間帯はフルディスク観測を行わない。
 東経140.7±0.1度に保持するため、定期的(2週間毎)に東西南北の軌道制御を行う。この際もフルディスク観測は行わない。
 その他、加速度計や角速度系が設置されており、地上に伝送した上で解析。

 熱制御系。バス機器・ミッション機器の温度を許容範囲内に制御。

 2液推進系。

 略語表。ABI, AHI, CCSDS, DCP, GOES, FOR, HK, HOPE, IRU, JMA, LWIR, MWIR, MTSAT, RWA, SEDA, STT, VNIR, TC&R。

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3.HOPE 地上システム

 PFI(Private Finance Initiative)方式で運用を行う。民間企業の創意工夫で実現することにより効率的かつ効果的な事業を行うことを目指している。

 18ページ目、図1、HOPE地上システムの配置と設備構成図。
 鳩山アンテナサイト(AS)と板橋データセンター(DC)が主局、江別AS/DCが副局。主局と副局は800kmほど離れていて、地震や火山等の災害やKa帯降雨減衰の影響を同時に受けないように配慮。局の設備は全く同じ構成になっている。局間・局内で冗長化を行い、速やかな障害復旧が可能なシステム。

 局、設備、装置の各階層で冗長化を行うことで、生姜発生時の影響範囲を局所化。各階層で、主系に障害が生じた場合は即座に特定し従系へスムーズかつ確実に切り替え。局の配置も地理的に考慮。
 衛星から受信したデータは常に複数の系統で同時に処理。障害が発生しても最初からやり直す必要がない。
 特に重要な設備は3重以上の多重冗長化。予備部品は必要な場所に準備して復旧時間を短縮。

 局の配置。関東に主局を配置すること、1局以上の副局を、地震や火山等の大規模災害発生時の想定被害範囲を考慮して配置することを要求。
 Ka帯(18GHz帯)の降雨減衰も考慮に入れ、過去の梅雨や台風や気象災害の発生例をもとに、同時に降雨減衰が発生する確率が低いと推定された北海道に副局の一つを配備することを要求。

 故障に備えて予備部品を用意。構成部品に関しては、一般的で15年の運用期間を通して継続的に入手可能になるように選定。

 19ページ目、写真1、主局と副局のアンテナサイトの外観。
 主局は台地にアンテナだけ置きました、って感じ。副局はデータセンターと同じ敷地なので、あんまり「人里離れた」という感じではないかな。

 アンテナはKaとKuの送受信を共用できるもので、これが冗長系として2組。他に、DCP(UHF)の送信が可能なアンテナも含まれる。

 20ページ目、図2、ひまわりから気象庁までのネットワーク。
 主局AS-主局DC間、主局DC-気象衛星センター間、副局AS/DC-気象衛星センター間、副局AS/DC-大阪管区気象台間、主局DC-副局AS/DC間、の接続がある。
 主局と大阪管区の接続はない。主局DCが生きてるなら気象衛星センターも生きてるだろうし、主局DCが使えないなら気象衛星センターも使えない、ということかな。
 主局DC/気象衛星センターが使えないような大災害とかが発生すれば、北海道のAS/DCから大阪管区気象台へデータを送ることになるんだろうが、関東の太平洋側壊滅な状態だと、そこを経由するデータ通信が生きてるかは微妙な気もするな。日本海側通すルートがあるんだろうか? 気象衛星センターのバックアップは札幌管区気象台でやったほうがいい気がする。江別AS/DCとは目と鼻の先だし。

 ネットワークの構築は、通信事業者の回線を利用するが、事業者やサービスレベルによって信頼度や災害耐性が大きく異なる。複数の事業者とサービスレベルを組み合わせた回線で冗長化している。気象衛星センターへ至る経路は特に信頼性を高めている。
 セキュリティー等にも配慮。


 各設備の概要

 衛星管制設備。衛星運用を行う上で重要である点、2機の衛星を管制する必要がある点、等から、十分な冗長性を確保した設計としている。
 H8/9では、2.5分毎にコマンド運用が行われる。領域観測の指示等。従来の衛星にはなかった運用。観測位置が固定な観測(フルディスク、領域1/2)は、従来どおりのスケジューリングで、2週間分をまとめてコマンドを送る。位置を指定できる領域3,4,5は、観測開始直前にタイミングよくコマンドを送る必要がある。2.5分間隔でタイミングよく送る必要があるので、確実に動作する設備が必要。

 衛星管制ソフトBirdstarを使用。
 Birdstarは、1) 衛星監視制御ソフトウェア(SMAC: Satellite Monitor And Control)、2) 地上局監視制御ソフトウェア(GMAC: Ground Monitoring And Control)、3) 衛星運用計画ソフトウェア(SOPS: Satellite Operation Planning & Scheduling)、4) 軌道運用解析ソフトウェア(ORAMS: Orbital Analysis and Mission Software)、5) 衛星データ解析ソフトウェア(SADA: Satellite Data Analysis)からなる。
 衛星へのコマンド送信はSOPSで行われる。

 運用では、管制設備のサーバーにBirdstarを搭載し、統合管制端末(TCT)にBirdstarクライアントを搭載し、各端末からアクセスできる。TCTが壊れても別のTCTを使えば運用を継続できる。

 その他、データ処理の話とか。

 略語集。AS, DC, GMS, HOPE, JMA, PFI, RDACS, SOPS, TCT。


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4.静止気象衛星画像作成システム

 略語集。COTS, DB, GSS, HOPE, HSD, JMA, MSC, PFI, RDACS, SEDA, SS。

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5.領域観測予約システム

 略語集。HOPE, JMA, MMI, MSC, RDACS, TCT。

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6.インターネット等による静止気象衛星画像データ配信サービス(HimawariCloud)の概要

 略語集。AARnet, CDN, GSS, NREN, SINET。

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7.商用通信衛星による静止気象衛星画像データ配信サービス(HimawariCast)の概要

 略語集。DVB-S2, FEC, GPV, GSS, HPA, HRIT, IF, JCSAT, LNB, LRIT, MDUS, QPSK, RF, SATAID, SDUS。

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 長すぎて後半飽きた。あと、運用に関する情報とかだと読んでも面白くないし。。

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