2019年1月27日日曜日

衛星の通信系とか

 [衛星通信技術の変遷](http://www.mss.co.jp/technology/report/pdf/20-02.pdf)

 JERS-1(ふよう1号)ではQPSK変調で60Mbpsの転送が行われた。同時期にESAの衛星(EERS-1)の受信も整備し、これはQPSK/105Mbpsだった。
 当時のデジタル回路ではTTLやCMOSが主流で、20MHz程度が上限だった。JERS-1では30MHz、EERS-1では52.5MHzが必要になるため、ECL(エミッタ結合論理)と呼ばれるデバイスで50MHzまで改善させ、さらに並列処理を行うことで高速処理を行った。
 通常のデジタル回路と違い、信号が正弦波に近づく。
 オシロで見ても調整できず、ビットエラーレートが最小になるような調整を行った。


 ADEOS(みどり)ではQPSK/60Mbpsが2chと6Mbpsが1chの、3chのダウンリンクがあった。回路的にはJERS-1のものと同一で実現。
 クロスEleのアンテナを整備することで高仰角でのAzi駆動速度を抑えて追尾。

 ADEOS-2はADEOSの後続だが、伝送方式が変更。60Mbpsと6MbpsをそれぞれPSK変調して直交合成、UQPSK変調とした。
 タイミングがシビアで、30m超のケーブルを遅延線として使用し、最終的にミリメートル単位の調整を行った。
 3セットほどしか作られず、ミッション終了で廃棄?されて残ってない(ADEOS/ADEOS-2とも衛星トラブルで早期に運用終了)。


 ALOSでは伝送データが増えて、DRTSによる中継も行われる。
 デジタル回路の高速化も進んでいるが、データ帯域が増えたので大変。


 COMETS(かけはし)/DRTS(こだま)ではQPSK/120Mbpsを使用。
 JEM(きぼう)でQPSK/50Mbps。


 11ページに新GN(地上局)の開発スケジュール。98年度に提案、98年度末から02年度頭にかけて開発、02年度頭から03年度中頃にかけてUSERS, DRTS, ADEOS-II, μ-LabSat, SERVISを運用。05年度頭から07年度末にかけても様々な運用と、並行してシステム拡張。
 07年度以降はSELENE(月周回軌道)やQZS(準天頂軌道)など、いままでになかった軌道を追跡する必要が出てきた。


 CCSDS(宇宙データシステム諮問委員会)勧告を適用したが、英文を理解するのが大変、読んでも決められてないパラメーターがあり、運用して初めて出てくる問題がある、「こういうときはエラーとする」という条件は書いてあるが、その時のどうするかは書かれてない、など、いろいろ大変。

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 [ETS-Ⅶにおける CCSDS 勧告の適用](http://stage.tksc.jaxa.jp/ccsds/ccsds/success_story_1.pdf)

 NASDAの衛星はアメリカからの技術導入で始まった。1987年打ち上げのETS-Vから国産化した。
 時分割でデータを転送するTDM方式を採用し、このバスはCU-RIUという名前。
 CU-RIUはETS-V以降、NASDA標準として多くの衛星に搭載された。

 その後、搭載機器が増えたりして、時分割方式では対応が大変になってきた。
 1997年のETS-VII(おりひめ・ひこぼし)では軌道上でランデブー・ドッキングやロボットアームの実験を行う。地上から遠隔操作(テレオペレーション)を行うが、TDMで実現するのは困難。
 そのため、テレコマにはCCSDSの勧告を適用した(日本の衛星で初)。
 CCSDSを適用した結果、TDMと比べてコマンド設計の自由度が高くなり、他機関との調整も容易になった。ETS-VIIではドイツの機関がロボットのテレオペを行った。

 ETS-VIIでCCSDSが有効だとわかり、衛星用のCCSDSを処理するASICを作った。以降の衛星はすべてCCSDSを使用。
 ただしEST-VIIでは開発期間や費用の点からすべての搭載機器をCCSDS化することはできず、CU-RIUも使用した。CU-RIUを使ったのはEST-VIIが最後。

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 [国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう(JEM)」の開発](https://jpn.nec.com/techrep/journal/g11/n01/pdf/110107.pdf)

 2011年頃

 管制制御装置(JCP: Jem Control Processor)は08年6月に起動されて以来、休みなく動き続ける。
 ハードウェアはJEM開発初期の90年代前半に決定されて、32bitCISC、12MBのRAM、SCSI接続の300MBのハードディスクと、1553Bが3ch、という感じ。ただしハードディスクはSSDにリプレース済み。
 JCPはJEM内で離れた2箇所に設置され、冗長化されている。離れた場所にあるのは、局所的な火災等に耐えるため。

 JEMからはDRTSを経由する日本独自の回線でデータをやり取りできる。

・ISSは「柔軟な構造物」で、姿勢擾乱が大きいので、静止軌道上のDRTSへ正確に指向する必要がある。
・CCSDSに準拠。
・民生品を活用(MPEG、イーサーネット、その他)
・有人対応安全(人間に対して悪影響を及ぼさない)

 安全の例としてRF系が書かれている。1) そもそもISSに対してアンテナが向かない構造 2) DTRSとの通信時間を設定し、予め決めたタイミング・方向以外にRFを放射した場合は自動停止 3) アンテナ付近でEVAを行う場合は2故障許容の停止機能、という感じ。
 2故障許容というのは、「安全装置が2箇所壊れても安全な状態を維持する」という感じか。

 その他ロボットアームの話とか。
 ISSでは周りに人手があるから、通常の衛星では行えない「壊れた部品を交換する」という運用が可能になる。それが可能なようにアームを設計。
 有人対応安全では、1) 2故障許容で構造物に接近しない、かつ、構造物に接触しても悪影響を与えない速度に制限 2) 物体を宇宙空間に放出してデブリにしないように、相手が把持したことを3種類の方法で確認し、人間の操作も3個のコマンドを入力しないと開放しない、という感じ。
 また、ISSにはJEMアームを含めて3台のロボットが稼働しているので、共通化を積極的に取り入れた。

 きぼう運用管制システム(JEM OSC: Operations Control System)はつくば(TKSC)にある。
 OSCには約20台のコンピュータ、約100台の端末、3台のスクリーン、約70台の音声端末、その他、からなる。
 JEMの熱制御、電力、通信、空調、生命維持、ロボティクス、の状況を監視でき、火災や減圧、汚染が発生した場合は音声設備を通じで指示を出せる。


 その他、暴露部のミッション機器の話が少し。

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 [データ中継衛星による2GHz CDMAリンクのデータ伝送とPN測距](http://stage.tksc.jaxa.jp/ccsds/docs/files/bluebook/sls/415_1_b_1.pdf)

 2011年9月付

 2ページ目に通信のブロック図。
 中継衛星→LEO衛星がフォワード、LEO衛星→中継衛星がリターン、となっている。


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