2019年3月10日日曜日

衛星の利点と欠点

 衛星の利点
a1) 全地球規模で観測できる(軌道によっては極地は観測不能)
a2) 比較的長い期間(e.g.>数年)、安定した周期(e.g. 数日)で観測できる
a3) 領空の概念が適用されない(少なくとも平時は撃墜される恐れが低い)
a4) 広い範囲(e.g.>数十km x 数百km)を短期間(c.f.航空機)で観測できる

 衛星の欠点
b1) 初期費用がかかる(e.g.>数百億円)
b2) 観測するタイミングに制限を受ける(見たいときに見れない)
b3) 観測する方向に制限を受ける(見たい方向から見れない)
b4) パッシブの場合、解像度が低い(c.f.航空機)
b5) アクティブの場合、感度が低い(c.f.航空機)
b6) 光学の場合、高層の雲に影響を受けやすい(航空機では雲の下を飛べる)
b7) 1回打ち上げると、観測機材の更新ができない

 航空機の利点
c1) ATCや気象の許す限り、任意のタイミング・方位から観測できる
c2) 既存の航空機を流用する場合、安価に導入できる(c.f.衛星/ロケット)
c3) 観測機材の修理・更新が可能
c4) 近距離から観測できる(e.g.<数km)
c5) 短期間なら、高頻度・継続的に観測できる(c.f.衛星)

 航空機の欠点
d1) 中頻度での継続観測に制限(e.g.数日間隔で数ヶ月以上)
d2) 有人機の場合、有人機としての安全性が要求される(c.f.無人機)
d3) 無人機の場合、規模に制限(c.f.有人機)
d4) 非友好的な国・地域の観測に制限

 まだいろいろあるだろうけど、思いつき次第追記するかも。


 冷戦後期以降のような、敵国を監視する目的においては、衛星の方が有利だった(対空ミサイル・戦闘機が発達する以前は航空機による敵国の偵察が可能だった)。
 あるいは、全地球規模での現象(気象循環等)を観測したい場合は衛星が有利。
 その他、地上から見えない天体現象(大気に吸収される電磁波)を継続的に見る場合は、衛星による観測が必要。ただし、数日程度(将来的に1ヶ月~程度)の観測で足りるなら、大気球で観測可能な場合もある。

 災害時の緊急観測時等であれば、航空機のほうが圧倒的に有利。衛星では数時間から数日の待ち時間が発生し、非常に遠距離から観測するために感度や解像度に制限を受ける。
 航空機であれば、ATCや空港の安全確認等で数時間程度の待ち時間が必要になるが、衛星と比べて非常に近い距離から詳細に観測できる。また、衛星と比較して長い時間、継続的に観測でき、自由に動くことができる。
 ただし、観測用の航空機の分散配置や、専用に維持する場合は高コストになる。


 小型衛星を開発する際の宣伝に、特定の地域を観測したい、というミッションが出てくることがある(特に地方の組織が開発する場合、地元の農業や河川を目標にしている場合がある)。しかし、この用途は衛星と比較してドローンのほうが使いやすい。


 衛星を使ってミッションを行う場合、手段と目的を間違えないようにする必要がある。「小型衛星の無償(or安価な)打ち上げ枠を使って衛星を打ち上げて大学・企業の宣伝をしたい」というのが目的になってしまうと本末転倒(それを目的として打ち上げる組織もあるだろうけど)。
 比較的安価に開発できる衛星となると10kg程度が上限? この規模で実現できるミッションは何か。


 衛星に否定的なことばかり書いてきたが、自分としては衛星を否定的に見ているわけではない。適切なミッションを設定できれば衛星(キューブサット含む)にも大きな意味がある。しかし、小型衛星であれもこれも、と欲を出すと…?

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更新履歴
2019/03/13
 箇条書きのフォーマットを変更
 a4を追加

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