2019年3月8日金曜日

軍艦のレーダー

 ところどころを取り出すと、時代順で スプルーアンス級 → タイコンデロガ級 → アーレイ・バーク級 → あきづき型 → あさひ型 という感じか。
 スプルーアンス級はメカニカルスキャンのレーダー。タイコンデロガ級はスプルーアンス級をベースに、PESAを4面。アーレイ・バーク級もPESAを4面。あきづき型とあさひ型はAESAを8面。

 PESAは、大電力の増幅器を分岐して移相器に送り、位相を変更した上で放射する。そのため、大電力増幅器(PA)が必要。タイコンデロガ級はスプルーアンス級をベースとしたため、艦橋が前後に分かれており、PAも2個搭載されていた。
 アーレイ・バーク級では艦橋を1つとし、1個のPAから4面のPESAへ分配する構造となっている。ただし、レーダーの配置の問題から、艦橋周辺の背の高い構造物に対する形状の制限が加わった。そのため、艦橋後部にある煙突は幅が狭いデザインとなり、使用できる体積(空間)も制限されることとなった。Flight IIAではヘリ格納庫を増設したが、これを回避するために後部レーダーは高さが変更になっている。
 タイコンデロガ級では、レーダーは前側と後ろ側の艦橋に分かれていたため、2つの艦橋の間は自由に使うことができた。

 あきづき型はAESAを採用することにより、PAが不要となり、レーダー配置の自由度が高まった。このため、前部艦橋と後部艦橋にレーダーを分けて配置することができるようになった。スプルーアンス級への先祖返りと考えることができる。

 あさひ型は、大まかにはあきづき型と同様のデザインだが、後方レーダーが前部艦橋に設置され、後部艦橋は配置されなくなった。また、煙突のデザインも変更され、より幅が狭い形になった。あさひ型は、アーレイバーク級・こんごう型・あたご型・まや型といった、一連のアーレイ・バーク級デザインへの先祖返りと考えることができる。


 結局の所、艦橋を分割してレーダーを前後配置するメリットは、さほど大きくはないのかもしれない。実際、あきづき型では前後艦橋間の空間を有効活用できているとは言えず、かなりスカスカな印象がある。
 船体中央に幅が広く背の高い構造物を配置すると、必然的に重心が高くなり、またステルス性も損なわれてしまう。重心を下げたりステルス性を重視したり、となると、船体上部の構造物は小さくせざるを得ず、そうするとレーダーは前部艦橋に集中させ、それ以外の構造物は幅や高さに制限を加える、といったデザインのほうがいいのかもしれない。


 導波管で複雑な分配を行う必要のあるPESAは、設計変更をすると膨大な確認が必要になり、そのためイージス・アショアはアーレイ・バーク級の艦橋をまるごと持ってきているわけだが、Flight IIIや固体化アショアであればそのあたりの自由度はある程度改善されるはず。とするとレーダーの配置が変更になったりするのかもしれない。とはいえ、レーダー中心や角度が変わると信号処理も変更せざるを得ないから、そのへんのバグ混入を考えると無闇矢鱈とレーダー配置の変更はできないかも。
 あちこちレーダー配置を動かす日本は特殊かもしれない。DDやDDGやDDHや、幅広い任務に応じて複数の艦種が必要になる、という事情があるのかもしれないが。

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