2019年10月10日木曜日

NorthropGrumman MEV-1



 ちょっと前に話題になってた、燃料補給する衛星ってこれかー。
 衛星に軌道上で推薬補給ってどんなファンタジーだよ、と思ってたけど、補給するわけじゃないのね。


 静止衛星って、南北にソーラーパドルが突き出ていて、1時間に15度、1日に1回転することで常に太陽を追尾し続ける構造になっているけど、MEVはパドルを左右に突き出すような構造になっている。
 ではどうやって太陽光を追尾するかというと、衛星から見て太陽が東西を通過するタイミングでパドルをクルッと回転させる。結構コミカルな挙動。東西のパドルが同じ方向に回転するので、角運動量の変化が大きそう。1日に1回、行ったり来たりするので、角運動量の蓄積としては大したことはないだろうけども。
 パドルを南北に配置して通信衛星に影を落としても、時間的には大したことはないような気もするけど、ただでさえ劣化した電池と劣化したパドルを酷使することになるから、そのあたりを嫌って東西の配置にしたのかも。
 しかしMEV自体は1日に2回、発生電力が急減するタイミングがあるから、電池のサイクル数はかなり必要そう。とはいえ、LEOに比べれば少ないし、容量とか深度を気にすれば大したことはないのかな?


 衛星との結合は、アポジエンジンにプローブを突っ込む感じ。アポジエンジンは500Nの推力として50kgが加わるわけだから、構造的にはかなり強く作られてるはず。
 強度で言えばPAFのほうが遥かに頑丈(衛星質量x重力加速度数倍)だろうけど、火工品で分離するような構造だとあとから接続するのは大変そう。

 初期の静止衛星はアポジキックモーターを分離しちゃうし、今後の静止衛星はアポジキックエンジンを搭載しないだろうし、このタイプの結合が使えるのは今だけだろうなぁ。まぁ、今後の衛星はアポジエンジンが無くなる代わりに推進剤効率が高くなって、こういう「補給機」も必要なくなるんだろうけど。

 電気推進だとヒドラジンみたいに剣呑な流体じゃないから、軌道上補給とかもやりやすくなるのかな? とすると全電化衛星に対しての「給油機」も出てくるのかな? キセノン等は高圧(数十MPa)で充填されるけど、軌道上で再充填できるなら、再充填時は低圧で充填してもいいわけだし。15MPaで10年として、5MPaで充填すれば3年。3年毎にキセノンを再充填。推進剤全量入れて数年後にミッションできなくなったら高価な希ガスがもったいないし。ただ、数年サイクルで充填して、しかも1回の充填は数日で終わるだろうから、補給衛星には高アジリティが要求されそう。MEV-1は衛星に張り付くので、軌道変更に数ヶ月かかったとしても問題ないけど、Xe補給衛星とかだともっと素早く動かしたい気はする。とすると、全電化衛星が主流になって、軌道上で再充填する時代になると、2液推進系を使う衛星が復活するかも?
 大量のキセノンを積んだ化学推進衛星かぁ。キセノン代だけで凄まじい値段になりそうだ。充填すれば燃料代として回収できるとはいえ。。

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