2020年1月11日土曜日

空想:ロケットの1点故障対応

 ロケットって、基本的に全体がクリティカルで、どこか故障すれば大抵は軌道投入に失敗するわけだけど、例えばH-II#5の打ち上げのように、第2段が相当早い段階で停止しても軌道投入は行える、という事例もある。この場合、第2段が停止した時点で司令破壊を行ってしまうと、すでに軌道速度に達しているために大量のデブリを発生させてしまう危険性がある。
 また、H-II#8の場合は第1段メインエンジンが早期に停止し、あるいはH-IIA#6の場合はSRB-Aの分離が異常となったが、その後も飛行を継続し、第1段・第2段分離、第2段燃焼開始、とシーケンスを進めている。最終的にはどちらも最終的には司令破壊しているが。

 このような故障が発生した場合に、「現時点で軌道投入の見込みはあるのか」という判断は、どのように行っているんだろうか?
 GTO等に入れる予定の打ち上げでロケット側に故障が発生した場合、軌道速度が足りなくても、衛星全損するよりは最低でも低軌道に載せたほうが、損失は少なく済むはず。例えば「第1段が何秒以上燃焼できた場合(or燃焼終了までに何m/sまで加速できた場合)は、第2段が正常であれば最低限LEOまでは上がれる」といった判断基準は作れるんだろうか。

 II#8やIIA#6はどちらも第1段付近での故障だが、シーケンスを見てみると、第1段・第2段分離や第2段燃焼開始は、おおよそ計画地に近い範囲にある気がする。#8で1割、#6で数%、程度の差。もっとも、#6の方は、少なくともメインエンジンの燃焼は正常なので、計画値に近い数字になるのは納得な気もするが。
 #8の場合は早期に燃焼が終了しているが、1・2段分離は1段燃焼終了から83秒後に行われている(その間にフェアリング分離のイベントがある)。おそらくフェアリング分離、段間分離、燃焼開始はオンボードのシーケンサーによって行われていて、地上からのコマンドは無いはず。とすると、第1段周りで不具合が発生した場合でも、直ちに第2段に引き継いで軌道に乗せる、ということはできないのか。

 II#5はGTOに乗せる予定だったので、LEOに乗せるための増速量にある程度の余裕があったはず。IIA#6はSSOのはずなのであまり余裕はないか。
 II#8はGTOを目指していたので、LEOに乗せるなら増速量にある程度の余裕はありそうだけど、そもそも速度のグラフを見ると第2段の加速が相当小さい。第1段燃焼停止から放物線を描いて、第2段燃焼開始後も有意に変化しているようには見えないが、燃焼できていたんだろうか? テレメは取れてるはずだから、燃焼の有無は判断できるだろうし、火がついたと判断できるから燃焼開始の実測値が書かれているんだろうけども。
 ロケットの姿勢制御として「この時間はこの姿勢で飛行する」というシーケンスが組まれていた場合は、第1段がオフノミナルだと第2段が最適な姿勢にならない可能性はあるか。


 H-II#8とH-IIA#6の資料を軽く眺める感じだと、第1段付近の故障に対する耐久性はなさそうだなぁ。今後、ロケットの性能(処理能力とか)に余裕が出てくれば、ある程度のロバスト性を獲得するロケットが出てくるかもしれないけど。あるいは、そもそもファルコンみたいに量産&クラスタ化でロバスト性を確保する方向もあるだろうし。

// H-II#8の打ち上げ前に行われた安全評価部会、構成委員に宇宙開発・安全管理と関係なさそうな肩書の人間が結構いる(一番遠そうなところだとパチンコ・パチスロの業界団体の偉そうな人とか)けど、どういう基準で集めてるんだろうか。

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