
静止衛星のグラフ。最近投入された衛星は凡例に名前を表示している。DEB, AKM, R/Bは除いてある。
大抵の衛星は典型的なGTOに載せた後にアポジキックでサクッと静止化してる。一方で、電気推進と思われるようなプロファイルの衛星もかなり多い。
電気推進でじっくり静止化する衛星でも、いろいろと個性があって面白い。遠地点が6万kmを超えたあたりに投入する衛星とか、一旦遠地点を上げてから離心率を下げる衛星とか。
例えば、19年6月20日にアリアンVで打ち上げられたAT&T T-16とEUTELSAT 7Cの、2つの静止衛星。T-16は2液推進での静止化を行うために、遠地点高度が3万6千kmになるように打ち上げられた。一方、7Cは全電化衛星のため、電気推進で静止化する必要があるが、近地点と同時に遠地点も上げて、最高で5万kmまで達し、その後離心率を下げるような軌道遷移が行われている。
電気推進の場合、推力を頻繁にON/OFFできないから、遠地点を維持しながら近地点を持ち上げる、といった運用は困難なはず。可能か不可能かで言えば、遠地点への影響が支配的な場所での推進は無駄な方向へ吹けば、遠地点を変えずに近地点だけ上げることも可能なはずだが、当然「無駄な噴射」が行われるわけだから、そのあたりは軌道設計次第だろう。
あるいは、19年03月16日にデルタIVで打ち上げられたWGS-10のように、近地点が1000km弱、遠地点が4.5万km弱の軌道から、2液で遠地点を2.6万km程度まで持ち上げて、その後は電気推進で離心率を下げる、といった運用もある。化学推進と電気推進の折衝案のようで面白い。
静止化の種類を、ロケットや衛星バスの種類で分類してみると、面白いかもしれない。他の軌道の衛星の場合、あるコンステレーション(IridiumやStarlink等)はほぼ同一の機体を使うから皆同じようなシーケンスになるはず。衛星の目的が異なると軌道設計も個別に行われるから、比較が難しい。静止衛星の場合は、最終的な目的地(平均運動・軌道傾斜角・離心率・等)はすべての衛星が同じだから、ロケットや衛星の個性が色濃く見えてくる。
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