H-IIロケットは、横に細長いSRBがついている。H-IIAでは太く短いSRB-Aへと変更になった。
H-IIロケットは、発射台に据え付ける際は、まずSRBを発射台に固定した後に、SRBにコアステージ(第1段・第2段・フェアリング等)を吊り下げる、という構造になっている。
この方式の利点として、コアステージとSRBとの結合が第1段の高い部分で行われるため、第1段の大部分(およそ下3分の2)の強度がさほど必要ない点があげられる。また、地上に立てた状態での横風等に対する強度をSRBが担うから、コアステージはそのための大きな強度が必要ない。そしてSRBは比較的早い段階で投棄するから、地上付近で求められる強度に対する補強分の重量増加は、ペイロードに対する感度が大きくならない。
というふうに、長いSRBで強度を出してコアステージの最大荷重を高い場所へ留める、という設計には、様々な利点がある。
H-IIAでは、いくつかの理由によってこの設計が変更された。
高張力鋼で作られたSRBに対し、FRPで作られたSRB-Aは太く短くなったため、コアステージの高い部分(LH2タンクとLOXタンクの中間部)まで届かなくなったこと、そもそもFRPになったため点に強度を出す設計が行いづらいこと(加えて、SRB-Aの設計はライセンス方式のため、独自に改造しづらかったこと)、そして、最大の要因として、LRBの使用が想定されていたが、このLRBはコアの横に単独で立てるから、LRBの構造としてSRBを使うことができない、といった点が考えられる。他にも、部品点数や組み立てやすさ、打上げ準備のしやすさ、といった理由がある。
なお、コアやLRBは極力設計を共通化することを優先しているが、LRBの有無で結合部の有無や、またHTV打ち上げ型では必要に応じてコアステージに補強を施す設計を行うことが想定されていたようだ。
ロケットを打ち上げる際は、ブースタによってコアを持ち上げる荷重が加わるから、打ち上げ前からブースタで支える場合は、単純に荷重量の増加の変化しか無い。一方、コアでSRBを支える場合は、打ち上げ前はSRBをぶら下げる荷重が、打ち上げ後はSRBに引っ張られる荷重に変わる。急激に荷重の向きと量が変わるから、この付近の設計は大変そうだ。
後から考えれば、HTVに対応した設計ではなかったために、コアステージの設計に変更を加えるくらいであれば第1段を作り直してH-IIBを作ろう、という判断が行いやすかったのかもしれない。しかし、そもそもLRBを使うことはなかったのだから、SRB非使用型(LRB向け)に対応した設計を行う必要もなかった。
様々な要求の結果として機体の固定方法が変更になったわけだが、LRBを使わない前提で設計を行っていれば、H-IIAはもう少し高性能なロケットになっていたかもしれない。
もっとも、H-IIの次期ロケットを開発中に「国際協力で必要なHTVは、次期ロケットでは打ち上げられないので、その次のロケットも作ってください」とは言えないだろうが。結果的にはISSの建造の遅れからHTVの運用開始も遅れて、それによってH-IIBが開発されたが、スケジュール通りにISSが建造されていた場合、HTVの打ち上げはどうやって行われたんだろうか?
ちなみに、H3ロケットは、最近になってヘビー型の構想も浮かびつつあるが、そもそもコア1本でSRB非使用の打ち上げコンフィグが作られているから、SRBに強度をもたせる設計はできない。
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