あんまり資料見つけられなかったんで、てきとーに予想。
SS-520-4号機/5号機の打ち上げにはラムライン制御部というものがついているらしい。
このラムライン制御部というのは第2段ノズルに埋め込まれた形状で搭載され、第1段の燃焼が終了後、ラムライン制御部によって姿勢制御が行われ、制御が終わった段階で分離・投棄される。また、4/5号機でのシーケンスは、ラムライン制御が終わった段階で第2段の点火のGo/NoGo判断を行い、軌道に投入するか、弾道で落とすかを判断するらしい。
このラムライン制御部は、ガス窒素(GN2)タンクを使用し、コールドガスで吹くらしい。スラスタは4個あるが、「井桁の左右方向だけ」のような配置のノズルになっているらしい。
要は、例えばX+の2本を吹けば平行移動、Y+方向のX+とY-方向のX-を吹けば回転、みたいな使い方になる。
SS-520-4/5は第1段が空力でスピンアップすることによるスピン安定で、第2段/3段は更に高レートでスピン安定させるらしい。そのため、所定のスピンレートまで角速度を得る必要があるため、平行移動以外に回転も行えるようなノズルの配置になっていると思われる。
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イプシロンロケットのラムライン推進系は、PBS(Post Boost Stage)に搭載されている機構。
PBSは試験機(1号機)と3号機で使用されているが、ラムライン推進系は1号機にのみ搭載されたらしい。
3号機のPBSは構成の最適化が行われ、推進剤が増やされたらしい。このため、3段燃焼中にラムライン制御を行わなくとも、PBSで誤差を吸収できるようになったため、ラムライン推進系が不要になったようだ。
PBSのラムライン推進系は、SS-520-4/5のラムライン制御部と違い、ノズルは1個のみが使用されるらしい(2個1組?)。ラムライン推進系/PBSは第3段のと衛星の間に搭載されるので、ラムライン推進系で真横に吹いても、姿勢制御としては弱いかもしれない。とすると、軸を傾けられるように、下向きに吹くかもしれない。
イプシロン4号機のCGを見ると第3段分離前にスピンさせ、PBS分離後にデスピンさせている。
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SS-520は2段の点火前に捨てちまうからしょうがないとして、イプシロンのほうはもうちょっとなんとかなるんじゃないか、という気がするよなぁ。
PBSを使わないときはスピン安定、PBSを使うときはスピンさせずPBSで軌道制御、とか。
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ところで、スラスタのエンジンは比推力はさほど重要ではなく、エネルギーが同じなら、低質量を高速で吹くより、大質量を低速で吹いたほうが効率がいい。
当然、缶サットのスラスタも同様で、つまり水を吹く、というのは結構効率がいい。ただし、缶サット(に限らず、すべての衛星で共通だが、)は重量に制限があるから、推進剤を目一杯重くする、という事はできない。例えばスペースプローブは重量制限が1kgだから、推進剤を5kg乗せる、ということは不可能。
件のスラスタの推力は、吹き始めた瞬間が一番推力が高く、その後は数割減になるはず。これは、バルブを開けた瞬間は配管の内圧により吹き出すが、その分がなくなるとタンクからの圧送で送られる分しか吹けないから、配管での損失が大きくなる。
つまり、大きなΔVが必要な場合でも、連続して吹くのではなく、短期間のパルスを複数回吹いたほうが、効率が良くなるはず。
場合によっては、バルブ固有の周期で吹けば、ウォーターハンマー現象で更に大きなΔVが稼げるかもしれない。ただ、コレは結構諸刃の剣な感じなので、あまり使えないかな。電子回路的に言えば、配管はインダクタンス、バルブはスイッチで、ブーストコンバーターを作るイメージ。十分な配管長があれば大きなピークを得られるが、コンデンサやダイオードがないから、かなり精密にタイミングを制御しなきゃいけない。ブーストコンバーターと違い、脈動があっても構わないというのが救いか。
できれば水と圧縮空気の2系統を用意して、ノズルの中で水を圧縮空気で加速して吹ければ、その分大きなΔVが得られるわけだが、バルブが2組必要になるから、かなり複雑になってしまう(吹く質量が同じであれば、高速に吹いたほうが有利)。
不活性な液相と気相を使うスラスタって、ハイブリッドロケットって言えるんだろうか?その意味では、ペットボトルロケットもハイブリッドロケットの範疇か。
推進剤にH2Oを使い、これにCO2を添加した場合、配管内での圧力損失をある程度補えるという意味で、単位時間あたりのΔVの向上が期待できるかもしれない。
ノズルの中でうまくCO2を放出させられれば噴射速度の向上が期待できたりと、H2O+CO2の組み合わせは若干期待しているのだが、水に対するCO2の溶解量は強い温度依存があり、待機中に充填時の温度より高くなると、CO2が放出されるため、内圧が異常に上昇する危険性がある。
冷却材で推進剤タンクを5℃程度に維持できるなら、CO2添加もアリかもしれないが、大変だろうなぁ。打ち上げ直前までアンビリカルケーブルを接続しておける、みたいな構造にしておけば、推進剤タンクの冷却や、不足した圧/CO2を追加できるかもしれない。
また、推進剤を+5℃、ノズルを+30℃、としておけば、Δt25℃分のCO2をノズルで放出できるから、噴射速度の向上も期待できるかもしれない。もっとも、レジストジェットロケットと同様に、投入エネルギーの問題が出てくるわけだが、沸騰させるわけじゃないから100kWなんていうアホみたいな量は必要ないはず。
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