2017年7月14日付
* 2ページ
きぼう実験棟(JEM)で作業を行うときは、ビデオカメラやスチルカメラで作業内容を記録する。この撮影(準備含む)が宇宙飛行士の作業時間の10%を占める。定点カメラもあるが、画質が悪く死角も多い。
この作業時間をゼロにすることを目標に、自分で動けるカメラを目指す。
3ページ目にスケジュール。16年6月に製造着手、17年3月にNASAに引き渡して、6月にFalcon 9/Dragonで打ち上げ。
* 4ページ
3段階のフェーズが設定されている。
現在のInt-Ballはフェーズ1の段階。ラピッドプロトタイピングでサクッと実証。ワイヤレスで撮影、空中での静止と最小限の移動を行う。データを取得して次のフェーズへ活用。
フェーズ2では、自立飛行を行い、またノーメンテナンスで稼働するようにする。「宇宙飛行士の作業時間ゼロを目指す」。充電等も自動化かな?
フェーズ3では、保管物品の管理や、緊急時の事故現場の調査を行ったり、船外活動(EVA)の代替のための予備検討作業等のための機能拡張。
物品の管理とかは、地上からカメラを操作して、モノを見て判断する、という感じかな? 補給品にRFIDタグをつけて、Int-Ballでスキャンできるようにすれば自動化できそうだが、宇宙で電波を使うのは大変そうな気もする。
事故現場というのはどういう想定だろうか。空気がリークしてる環境ではファンによる位置制御ができないし、ヤバ気なガスが出ているような状況ではファンは使いたくないだろうなぁ。
EVA代替ってどういうことだろうか。姿勢推定と姿勢制御はできるから、コールドガスのスラスタをパッケージ化して装着すれば、「ちょっとあそこ見てきて」ってエアロックから出すだけでいろいろ見て回れるかな。宇宙飛行士のEVAの撮影とかもできるかも。「GoProにSDカード入れ忘れた」ってときでもエアロックからInt-Ball出すだけで撮影できる。
「予備検証作業等のために機能を拡張する」と書いてあるのがすごいフンワリしてる感じ。
ノーメンテ自動稼働(or地上コマンドで制御)ということは、スラスタモジュールを自分で着脱できるような構造を作って、とりあえずJEM内で動き回るのを試す、くらいだろうか?
フェーズ4か5あたりで外に出せる機体を作るのかな。熱設計とか大変になりそうだ。
* 5ページ
Int-Ballのスペック
動画と静止画が取れるが、音声は無し。映像は無線LANで伝送。映像は720pと1080p。フレームレートは10-30fps。ビットレートは16kbps-40Mbpsまで。
移動は小型ファン、回転はリアクションホイールと、ファンでアンローディング? 自己位置推定は立体マーカーを撮影して画像処理。
直径が150mm以下で、本体重量は1kg以下。
駆動時間は2時間で、USBケーブルで充電。
音声は、大量にモーター積んでるからノイズだらけになるのかな? 昨今のスマートスピーカーで遊ぶモジュールが市販されてる状況を鑑みるに、ビームフォーミングして低ノイズで録音、くらいの機能はフェーズ2あたりで出てきそう。「いま○○の作業をしてる」とか音声で残せれば作業者も楽だろうし。ビームフォーミングするまでもなく、正面の音を撮るだけならいくらでもどうとでもなりそうな気がする。
フレームレートが可変なのは、Webカメラの、暗くなるとFPS落としてシャッタースピードを稼ぐ、みたいな感じだろうか?
ビットレートの幅が凄まじいな。
* 6,7ページ
地上展示品の外観。
7ページにカメラとセンサの配置。
顔の右側に縦50度、横90度の航法カメラ。顔の前、鼻のあたりにメインカメラ。
顔の上下と左側に超音波距離センサ。
顔の後ろに電源スイッチとか充電コネクタとか。
顔の下、首のちょっと前あたりに、センサやファンを避けて面ファスナー。宇宙空間であちこち動き回らないように壁に貼り付けておく用。
モーターの配置は、正面斜め上、斜め下、背面斜め上、斜め下の4機と、左右面に斜め上、斜め下、斜め前、斜め後ろ、の4機2組、計12機。
* 10ページ
内蔵した姿勢制御モジュールの諸元。
Cortex-M3を内蔵したPSoCで制御。
センサは6軸センサが6台。レンジは250dps/2gとのこと。
ファンは1台1mN程度の推力。電気推進の100分の1程度、イオンエンジンと同程度の推力か。
センサのレンジは可変と書いてある。スマホ用のMEMSセンサとか載せてるはずなので、最大2000dps/16gくらいまで、用途に合わせて選べるんだろう。
姿勢制御モジュールが1辺31mmの立方体で、センサやリアクションホイールを内蔵、電源を供給すれば使えるのかな?
ファンは外部の拡張基板で制御しているとのこと。5V供給の多チャンネルだから、I2Cのモータードライバとか積んでるのかも。
***
[きぼう船内ドローン「Int-Ball」の姿勢制御技術](https://shingi.jst.go.jp/var/rev0/0000/5067/2017_jaxa_6.pdf)
およそ3cmの立方体、約50gに3軸のリアクションホイールと6軸センサをパッケージング。世界最小クラス。
15年に10cm立方サイズをパッケージ化。でもキューブサットに使うにはでかすぎる。
10cm3ではアルミパネルの構造に組み付けてた。小型化にネック。
3cm3では回路基板を構造体として使用。小規模なSoCで制御するためにブラシレスホイールの回転速度検出方法を最適化。ワンチップで制御できる。
5ページ、リアクションホイールの原理。回転するホイールをブレーキで急停止させれば高トルク。
8ページ、3cm3RWのイラスト(紹介動画からキャプチャしたもの)。
「イラストはイメージです」という感じ。
14,15ページ、3cm3RWの諸元。
14ページが標準仕様、15ページがInt-Ball用。
IB用は宇宙で使うので高トルクは不要なため、電磁ブレーキを外し、ホイールを大型化して吸収できる角速度を増やした? 重量マシマシ。
16ページ、各部品の写真とか。
MEMSやSoCのコピーライト、サイプレス、ザイリンクス、インベンセンス、ローム。
メインの制御にPSoCのサイプレス、MEMSにインベンセンスとして、ザイリンクスとロームはなんだろう? 「写真はイメージです」用?
基板の写真、SPoCが乗ってる基板は実装密度が高い。ビアだらけ。リジッド基板でモジュールの剛性を確保。リジッド基板間はフレキ基板で接続。
18,19ページ
「NDA締結したら説明しちゃる!」
特許の話とか。
「NDA締結したら説明しちゃる!」
特許の話とか。
その後のページ、他の製品との比較とか、想定される用途とか。
38ページ
31mmサイズにパッケージ化する技術は確立していて、全てJAXAが持ってる。
Int-Ballを作って実証済み。
技術をJAXAが持ってるので、Int-Ball用のカスタムみたいなこともできる。
量産化は課題がある。企業と提携したい。
宇宙に限らずロボティクスや介護や土木やホビーやAIや、いろいろ応用ができる。
今までリアクションホイールは特殊な分野でしか使われなかった。企業さんで普及してもらえれば今まで考えられなかった分野で使われるかも。
JAXAとしては、企業にライセンス供与でやりたい。宇宙事業なら共同研究。
興味がある人は気軽に問い合わせてね!!
ってかんじ。
ホビー用途では転がって動くロボットみたいな想定もあるっぽいが、正直微妙な気がする。地上で使うなら球体の中にモーターを仕込んで転がすほうがいい気がする。
ドローンの姿勢制御もしかり。RWで制御するより、ローターで姿勢制御+ジンバルで安定化のほうが良さそうな気がする。
しかしまぁ1モジュール1-3万くらいで市販されれば電子工作で使う人も出てくるだろうし、もう少し安ければオモチャに組み込んで、とかいろいろ需要は出てきそうかな。
***
[国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟船内ドローン「Int-Ball」に P 板.com の基板が採用](https://www.p-ban.com/information/press/20171208/p-ban_press_release_20171208.pdf)
「株式会社ピーバンドットコム(本社:東京都千代田区、以下 P 板.com)のプリント基板製造および実装サービスが、国際宇宙ステーション「きぼう」船内ドローン「Int-Ball」(イントボール)の拡張回路基板制作に採用されました。」
メイン基板は違うらしい。
Int-Ballの正式名称はJEM Internal Ball Cameraとのこと。フェーズ3以降のEVAに対応したやつは、Ext-Ballとかになるんだろうか?
2ページ目に拡張基板とRWモジュールの写真。
RWモジュールにはインタープランのBluetooth LEモジュールが乗ってる。
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