イプシロンやそれ以前の固体燃料ロケットで使用された姿勢制御機構等
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SMSJ: Solid Motor Side Jet
SMRC: Solid Motor Roll Control
HGV: Hot Gas Valve
MPa-G: MPa単位でのゲージ圧
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[イプシロンロケット補助推進系SMSJの開発について ](https://repository.exst.jaxa.jp/dspace/bitstream/a-is/20364/1/61856012.pdf)
たぶん図4-5(イプシロン用SMSJのHGV概要)は挿入ミス。
イプシロンで使用されたSMSJのスペックや外観図、寸法、構造等が書いてある。
燃焼圧のグラフもあるけど、単位が書いてない。MPa-Gで一番下が-1MPaG、その上(燃焼終了後に安定する線)が0MPaG、とすると、燃焼圧は3.5MPaGといったあたりか。
イプシロン向けSMSJ(以降SMSJep)は燃焼時間170秒以上とのこと。イプシロンの第1段(長秒時型のSRB-A)は燃焼時間が120秒程度だから、SMSJのほうが50秒ほど燃焼時間が長い。
イプシロンF4のシーケンスだと第2段分離が2分41秒(161秒)だから、第2段分離後まで性能を維持できるようになっている。
SMSJepは3軸で吹けるようになっているため、ロール制御以外にも、ピッチ制御とヨー制御ができる。第2段分離前に第1段のTVCでは制御できないような細かい姿勢修正を行ってるんじゃないだろうか。
SMSJepは2箇所に穴が空いたバルブを、3箇所に穴が空いたパイプに挿入する形状で、バルブの向きを変えることにより3方向の穴のどれかを選んでその方向に推力を発生させることができる。
ポートはYの2方向とZの1方向の、計3箇所だが、バルブが中立の状態ではYの2方向に均等にガスを吹くようになっており、バルブを若干(22.5度)回すと、Yの+と-のどちらかを選んでガスを多く吹くことができる。さらに回して67.5度位置にすると、Z方向にガスを多く吹くが、Zまで回転させる途中はY+かY-のどちらかにガスを吹くため、不要な推力が発生する可能性がある。
この方式では、常にどこかのポートからガスを吹くようになっているため、内圧が過剰に上昇することはない。固体燃料ロケットモーターは内圧が上昇するとさらに燃焼が進みどんどん内圧が上昇し、最終的にケースが破壊(爆発)してしまうから、制御が必要ない場合でもガスを吹き続ける必要がある。
今後の話として、燃焼速度を制御したSMSJの案が書いてある。
固体燃料はノズルを広げて圧力を下げれば燃焼速度が低下するから、制御が不要なときはノズルを開いて燃焼速度を下げ、必要なときだけ一気に燃やす、という動作にすることにより、必要な燃料を減らせる、とのこと。
SMSJepはトータル100kgだから、推薬を減らしてケースも小型化したとすると、70kg程度まで軽量化できるんじゃないだろうか。それが2機だから、合わせて50kg程度の軽量化ができるはず。もっとも、第1段だけでも780トン弱という重さなので、その中の数十kgを減らしたところでどの程度ペイロードを増やせるか、というのは疑問でもあるが。第1段の最適化は、ロケット全体ではそれほど効果がなく、だからこそイプシロンでもSRB-Aを流用しているわけで、あまり効果は大きくない気がする。
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M-V向けのSMSJ(以降SMSJmv)はポートが2箇所で、この間にある棒状(板状)の部品を、ソレノイドで片側に寄せることにより、その方向へのガスの流量を制御し、推力を制御する構造になっている。
必要ないときでも常にガスを吹いてるのはSMSJepと同様(SMSJmvをもとにしてSMSJepが作られてるわけだが)。
この方式では推力を2方向にしか発生させられないので、相当数が必要になる(各段に搭載されているので、トータルではかなりの量になる)。ただ、要求された燃焼時間が短いこともあり、全体ではSMSJepと比べて4分の1程度の重量なので、総重量では大して変わっていない気もする。重量を維持して性能を上げた分だけSMSJepのほうが高性能なわけだが。
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もうちょっと書きたいこともあるけど、話がまとまらなくなるので今回はここまで。
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