2019年1月15日火曜日

グリーンプロペラント推進系

 革新的衛星技術実証1号機のグリーンプロペラント推進系(GPRCS)について。

 プレスキット
 http://fanfun.jaxa.jp/countdown/kakushin-epsilon4/pdf/kakushin01_press_kit_web.pdf

 ちゃんと読んでないので、気になることがあったらあとから書き足すかも。

 ところでこのプレスキット、テキスト選択ができないのは何の嫌がらせだろうか? PDFを拡大してもジャギーしないのでちゃんとテキストデータで持ってると思うんだけど。

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 GPRCS: Green Propellant Reaction Control System
 読んで字のごとくというか、略称から想像できる通りの名称ですね。

 推進剤はHAN系とのことで、Hydroxyl Ammonium Nitrateの略で、化学式はH4N2O4だそうです。えっちがいっぱいで、おーもいっぱいで、なんか…すごいです
 HAN自体は毒性や腐食性等があるようですが、噴射ガス自体は無毒だそうです。H2OとNOxになるのかな?


 今までの衛星ではヒドラジンが多用されていますが、強い毒性を持つため、この写真のように非常に厳重な防護をした上で取り扱う必要がありました。

File:X-37B OTV4 landed at Kennedy Space Center (170507-O-FH989-001).jpg - Wikipedia


 また、アクセルスペースでは過酸化水素(H2O2)を使ったスラスタも使用していたとのことですが、これはヒドラジンに比べて扱いやすい半面、性能ではヒドラジンに及ばないそうです。
 そのため、せっかくなら高性能で扱いやすいスラスタを作ろう、ということで、HAN系推進剤を使ったスラスタを実証することになったそうです。
 HAN系でも多少の危険性はありますが、ヒドラジンよりは簡単に扱える、ということでしょう。
 性能比でいうと、ヒドラジン系より5割程度高性能にできる、というふうに読めるような文があるので、かなり性能が向上するようです。

 海外では、NASAがGPIM(Green Propellant Infusion Mission)という衛星を計画しており、3月打ち上げ予定だそうです。
 他には、レイセオンのNCADE(Network Centric Airborne Defense Element)という、AIM-120改造のミサイル防衛システムに使用されるミサイルの弾頭(HKT)の誘導にも使われるそうです。

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 その他、新型のFPGAも軌道実証するそうです。

 従来のFPGAは、例えば4入力LUTの場合は、16bitのメモリから1bitを選択して出力する、というような構成になっていて、このメモリの内容を書き換えることにより、入力と出力を自由に組み合わせることが可能となっています。
 一方で、メモリに放射線が当たると内容が書き換わってしまう場合があり、そうなると正しい入出力の組み合わせにならないため、回路が破壊された、ということになってしまいます。
 新型のFPGA(NBFPGA: NanoBridge based Field Programmable Gate Array)はメモリセルを使用しないため、シングルビットエラーに対して耐性が高いんだとか。
 イラストが簡略化しすぎてどういう代物か全くわからないですが、まぁちゃんと動くんでしょう。後で調べてみます。

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 東工大からはスタートラッカの実証も行われます。
 民生部品を使用したスタートラッカを作成し、所定の寿命や性能を達成できるかを確認するそうです。
 また、バッフル部に撮像素子を追加し、これで地球を撮影するそうです。この画像を解析し、陸地の形状から衛星の姿勢を推定する実証も行うそうです。まずは1000枚以上の画像をダウンリンクして地上で学習を行うとのことなので、学習で地形(姿勢?)を判断できるようになった後に、そのパラメーターをアップリンクして軌道上で計算する、ということでしょうか。
 このスタートラッカでは2層のニューラルネットワークを用いて、撮影した画像を小さな領域ごとに8種類(宇宙・海・緑地・雲・等)に分類する、ということも行うようです。学習はISSから撮影した動画で実施済み、とのことです。

 姿勢の推定以外にも、ECEF空間での座標の推定もできそうな感じですね。民生用のニューラルネットワークプロセッサが宇宙で動けば、簡単に軌道上で6軸決定が行えるようになるかもしれません。
 また、写真に写った地域を推定できるようになれば、撮影した画像に優先度をつけてダウンリンクできるようになるため、姿勢制御ができない安価なキューブサットでも、もとにかく大量に写真を撮り、その写真から必要な画像だけをダウンリンクする、ということができるようになるため、中解像度・高頻度のリアルタイム地球観測ができるようになるかもしれません。今後が楽しみな技術です。

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 他に気になるところだと、ALE-1も打ち上げられますね。人工的に流れ星を作るという衛星です。

 また、記者会見時にNVSが質問してくれましたが、イプシロンの管制は3号機時点では6人で行われており、今回の事は言っていなかった気がしますが、同様になるのかな?
「一番最初に出したアニメーションでは3人で管制している思うが、それに対してはあと一歩」というようなことも言っていて、道半ば、といった雰囲気もありました。
 何回か6人運用で打ち上げてしまうと、「わざわざコストとリスクをかけて人数を半分にする必要があるのか」という雰囲気にもなりそうな気がしますが、今後に期待ですね。

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