2019年4月13日土曜日

IPOULBI、つづき

 可変スピンレートなハードディスクをリアクションホイールとして使う、という予定だったけど、おそらくこれは効率が悪そうな気がする。HDDは気流を使うから真空中で使うにはしっかり密封する必要があるし、気流による損失を低減できない、という点もある。
 現在のところ、microSD1枚で128GBとか、そういう単位になってきているので、半導体ストレージを活用したほうがいいはず。
 そうすると、リアクションホイールはエネルギーストレージに専念したほうが性能の良いものが作れるはず。

 エネルギーは、内部的には回転運動だが、これにより、衛星の角運動量と、発電した電力をあわせて保存する。気流を使わないので、気密を行う必要がなく、磁気軸受等の効率的な構造を用いることができる。

 非常に大きな回転エネルギーを内包するので、姿勢変更は難しいかもしれない。それにローターの質量が、探査機の軽さを相殺してしまう。

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 探査機の姿勢制御に関して。
 現案ではホイールを使うが、定期的にアンローディングが必要になる。十分に機動力が大きく、かつ低燃費な推進系が作れれば、ホイールが不要になる。
 IKAROSでは液晶デバイスを使っていた。温度環境が気になるところだが、この種の装置が一番使いやすいはず。
 他の方法としては、レーザーダイオードを使えないか、と考えている。要するに、ソーラーパネルで発電した電力をレーザーダイオードから光波として再放射する。液晶デバイスは再放射の角度に制限があるが、レーザーダイオードであればその制限は存在しない。ただし、効率はソーラーパネルとレーザーダイオードの積で決まる。将来的にLDの効率は100%まで効率化したい、という見込みだが、ソーラーパネルの効率はさほど高くできない。宇宙用では効率40%くらいか? 量産するとなると高価なデバイスは使えないので、もっと低効率になるはず。あるいは、数十万組も作れば高効率なモノでも安くなるかもしれないが。液晶デバイスは液晶の透過率(コントラスト)で推力が決定される。トータルで見て、どちらが効率的に使えるか。
 液晶は低温に弱い可能性がある。つまり、外側の惑星軌道で制限が加わる可能性がある。逆に、LDは高温に弱い。つまり、内側の惑星軌道で制限が加わる。まぁ、このあたりは実際に探査機を設計する段階になってから考えればいいか。

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 RF系に関して。
 2次元的な構造で作るストリップアンテナは、設計段階でいくつかの方向に指向性を設計できる。大別して、基板の平面が向く方向と、エッジが向く方向の2種類になる。
 おそらく、IPOULBIの視野は、惑星軌道面の南北方向に対して感度が強くなると考えられる。また、探査機本体は必要なエネルギーを集めるために、平面を太陽の方向に向ける必要がある。
 このことから、電波天文ミッションのアンテナは、探査機のエッジに開口がある方が使いやすいはず。観測は南北両側を行いたいなら、探査機の南北両辺に受信系を搭載する必要がある。
 テレコマに関しては、軌道前後方向に通信できればいい。地球から位相90度程度なら直接通信ができる。180度(太陽の向こう側)では指向性から外れるが、そもそもその位置関係では通信できないから、位相角90度付近の別の探査機グループで中継させる必要がある。
 位相+90/-90の両方で通信できるように、軌道前後両面にアンテナが必要になる。探査機単体では極端なペンシルビームを作る必要はなく、探査機グループ1組でフェーズドアレイを行うことにより、地球、あるいは別の探査機グループを指向する。
 そのため、通信系は、テレコマ系は送受信機が1個ずつ2組、ミッション系は受信機が2個、トータルで送信機が2個、受信が4個、という構成になる。

 姿勢制御用にレーザーを使うなら、通信にも使えるかもしれない。ノンコヒーレント光だけど、複数の探査機で同期してASKとか出せば地上(あるいは軌道上のレーザー受信衛星)で受信できるかも。探査機間の通信には使えないので、位相120度程度以上の探査機は、一旦電波で中継する必要はあるが。
 結局中継用の電波通信が必要になるので、RF系を削減することはできないが、姿勢制御用のレーザーを通信に流用できるなら、追加ハードウェア無しで高速通信ができるようになる。

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 探査機の形はどうなるんだろうか。サーモンエッグは切手サイズだった。
 IPOULBIの場合は、探査機単体である程度のビームを作り、それを複数使うので、最低でも単体でアレイアンテナを収容できる大きさが必要になる。少なくとも25x25cmくらいか?
 姿勢変更を行う場合、可能な限り推進系を重心から離したほうがいいけど、そうすると大きさも大きくなり、慣性モーメントが大きくなる。
 探査機の面積は、必要な開口性能と、必要な電力で決定される。受信するだけなら莫大なエネルギーは必要ではないが、送信を行うとすなると、投入エネルギーが通信性能に関わってくるだけに、太陽光発電は疎かにできない。姿勢制御に電気エネルギーを転用するなら、更に莫大なエネルギーが必要になる。
 ペラッペラの探査機の4辺にアレイアンテナ、太陽面はソーラーパネルを敷き詰めて、外側の面は放熱用に真っ黒、みたいな感じになるんだろうか。まぁ、放熱面積はさほど必要ないかもしれんが。
 姿勢制御が、レーザーで自由な向きに推力を発生させられるなら、探査機から棒を2本突き出して外側にLDを4個ずつ取り付ける、という感じになるんだろうか。せっかく棒を伸ばすならアンテナとしても使いたいなぁ。地球との通信はダイポールアンテナを使うようになるんだろうか?


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