2020年12月8日火曜日

小ネタ

 宇宙マイクロ波背景放射を発見したことで有名なベル電話研究所の50ft(15m)ホーンアンテナ、名前からしてホーンアンテナなんだけど、あれって本当にホーンアンテナなのか? という疑問。フィーダにホーンを使ったオフセットパラボラ、とうのが正しそうな気がする(英語版Wikipediaでもそういう雰囲気で書かれてる)。
 ホーンアンテナちゃちゃっと調べてるけど、いまいちよくわからん。長いスピーカーもモノとしてはホーンアンテナと同じらしい。どちらもインピーダンス整合が目的。というか、音響デバイスが先にあって、アンテナも結果的に同じ形になったんだろうけど。そういえば、ロケットエンジンのラバールノズルも後半は似たようなものか。

 Ep#4の移動地上局でもホーンアンテナ使ってたな。アレはIKAROSみたいに使えそうな部品は手当たりしだいに集めてくるようなやり方みたいだし、たまたま使えたのがホーンアンテナだった、みたいな理由だろうけども。
 しかし、ホーンアンテナってたけーんだな。S帯でも70万もするのかよ。S帯でも、というか、S帯だから、だろうけど。Ka帯用だと25万くらいで買えるらしい。このモデルはおそらく金属の塊を放電加工みたいなので削り出してるんじゃないだろうか。なので周波数が低い(=波長が長い=体積がデカイ)タイプは値段が高くなる。
 もちろん、板金リベットみたいなアンテナだと、もっと安くなる。

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 1970年代後半の資料で、衛星からのマイクロ波送信で、トランジスタを出力段に使う内容が書かれてる。42GHzで出力70mWだそうだ。周波数は1桁違うけど、Bluetoothのクラス1が100mW。
 最近のTWT回帰で「1周回って真空管」とか言われてるらしいけど、少なくとも2周以上してるわけだ。まぁ、そういう言い方してるの主に防衛装備品の人たちな気がするし、彼らの用途だと1周目かな。もっとも、n周目でもn-1から見れば「1周回って」という表現は間違ってないが。
 時代的にはECSとかISSとか、ちょうど衛星相手にVLBIやったり電離層とか探ろうとしてた頃だと思うけど、ECSはTWTを使ってるらしいし周波数も合わない。ISSはUHFあたりなので、マイクロ波は使ってない。
 この頃の衛星は調べれば周波数とかがかなり細かく書いてあるので、各衛星が使ってた周波数のリストとか作ってみても面白いかな、とか思ったり。日本の衛星のリスト見るとあまりにも多くて辟易するけど。

 国産TWTの試作品が出来上がったのが70年代後半で、開発にだいぶ手間取った、みたいな話を読んだ気がする。それを見ていた別のグループが「固体化したいよね!」と研究してたやつかな。BS-2a打上げは80年代に入ってからなので、もう少し後。BS-2bとかBS-3あたりでTWTの信頼性が改善し始めて、メインストリームになっていったのかな。
 なんか「液体推進系は複雑で使うの大変だから固体ロケットを高性能化しようぜ」と同じ雰囲気を感じる。当時は真面目にその方向で研究してたんだけど、相手の性能とか信頼性が高くなって結果的に使われなくなっちゃうやつ。そういえばロケットも増幅器もどっちも固体化だ。相手は液体と管で別物だけど。まぁ、液体推進系も管の引き回しが面倒って話も含んでるが。

 固体増幅素子は時代が進めば採用されるんだろうけど、少なくとも2020年頃打上げの放送衛星ではまだTWTが現役かな。
 例えば2020年8月に打上げられたBSAT-4bの場合、右旋・左旋ともに同時に12chずつを放送できて、予備も合わせてTWTが16本ずつ積んである。南北面の放熱パネルにTWTを搭載して、東西面にTWTの頭の放熱器が露出している形状。東西南北パネルのカド1辺あたり8本の頭が並んで、それが4組。
 準天頂衛星も大電力の放送のためにTWTを多数載せていて、特に3号機は静止軌道からいろいろ放送してるのでTWTの頭らしきモノが東西面に大量に出てる。初号機は南面にだけTWTを搭載、2・4号機は北面にも数本搭載。
 放送衛星以外だと、例えば深宇宙用途であれば、地上局のGREAT、小惑星探査機のMUSES-C、深宇宙小型探査機のPROCYON、あたりの通信周りは固体化されてる。このあたりは規格化されてるので、おそらく他の探査機も同様の傾向のはず。ただ、イオンエンジンみたいな連続運転が必要な用途だと、まだまだTWTが現役。DESTINY+もTWTを使うっぽい。
 宇宙分野以外だと、マリンレーダとかATCレーダは固体化が進んでるかな。
 電子レンジの固体化の話は、あんまり見かけないなぁ。少なくともあと5年はかかりそう。どこかのメーカーが、巣ごもり需要で高価格帯の多機能な(きめ細かな制御ができる)電子レンジに需要がある、とか血迷ったら、すぐ出てくるかも。もっとも、需要というよりは、安価に作れるパワーデバイスの供給が鍵かな。ガソリンエンジン車の販売禁止とかの話題もあるし、パワーデバイスの研究はどんどん加速するだろうから、長くともあと15年もすれば電子レンジで使える程度には安いデバイスも出てきそう。あるいは、熱制御デバイス(人工ダイヤモンドとか)が鍵になるかな?

 TWTAは高電圧が必要(真空中で絶縁破壊が怖い)とか寿命とかフットプリントとか、弱点もあるので、実績さえあれば放送通信衛星の送信もどんどんSSPAに変わっていくんだろうけども。HTSメインになってくるとDBF用にエレメントあたりの電力が下がって採用しやすく、みたいなふうになるんだろうか。

 ほとんど関係ないけど、はいふりの万里小路さん、買い出しに行く前のシーンで、たぶん真空管って言ってるんだろうけど、進行波管と聞こえるような気もするんだよなぁ。欲しい物を聞かれて進行波管と答える女子高生。
 進行波管と言ってたとして、進行波管を売ってるショッピングモールって何だよ、という話でもあるけど。いや、あれだけ海運が重要だと安全な運行にはマリンレーダも重要だし、キーパーツである進行波管が近所のスーパーで売ってるレベルで普及している可能性も……
 マリンレーダーは進行波管じゃなくてマグネトロン? あっ…… アーアー、キコエナーイ
 電子機器は順当に発達してる世界だし、掃海や捜索救難にも使いやすいように、信号処理でゴリ押しする感じのコヒーレントレーダが欲しいって話も出るだろうし、TWTみたいな変調できるモノ使ってたりしないかなぁ。斉射した砲弾を分離できるアジリティあるんだからAESA使ってる説まである。AESAならTWTでなくSSPAかなぁ。。。

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 YouTubeでStarlinkユーザー端末の分解動画がおすすめされてくる。
 Starlinkのユーザー端末、素直にすげーなーと感心するばかり。あんな素子数のフェーズドアレイを一家に1台配れるような時代が目前かぁ。10年ちょっと前(ETS-8の時)は3素子のフェーズドアレイを車載して24kbpsで通信したい、とかやってたのに。まさしく十年一昔。
 ファームウェアアップデートで融雪機能を高性能化したいと言ってるらしいんだけど、その実、シフターのコントローラにガリガリ命令送り込んで消費電力増やすだけじゃ? みたいな気がする。面積デカイとはいえ100Wも食ってりゃヒータなくても雪溶けるだろうよ。
 消費電力が大きいのは電子的に移相してるからかな? 例えばREESAとかだと消費電力はどれくらいになるんだろうか。ビーム振らなければただのアレイアンテナだからかなり高効率なはず。ビーム振るときはメカニカルに動かすからガッツリ電力喰いそうだけど。
 重量的な部分をクリアできれば、REESAは深宇宙探査に便利かもなぁ。姿勢自由度が高くなるし。はや2だとインパクタ運用とかはドップラーシフトと電波強度で見守るしかなかったけど、少リソースでビームフォーミングできるならリアルタイムでテレメを送れる。さすがに映像は難しいだろうけど、低解像度の画像1枚を数分ごとに、くらいは送れるかも。
 あれだけの面積にモーター敷き詰めたら重量も電力もヤバそうだし、偏波多重とかもできなくなるし、MGAくらいが落としどころかな? と思ったけど、導波管の伊達巻でも偏波多重使えないのは同じか。ならHGAに使ってもいいのか。
 腕時計とか、それぞれの針を個別に駆動する構造もあるし、かなり小さいリソースでREESA作って深宇宙に持ち出せるような気がする。CASIOの宇宙進出ワンチャンあるか? G-SHOCKとかで耐衝撃なドライブ機構とかノウハウありそうだし、低消費電力なんてそれこそ腕時計屋の専門分野だし、GPS同期とか作ってるから電波屋もいるだろうし、CASIO製深宇宙用HGAアンテナは真面目に作れそうな気がする。静止衛星相手の移動体通信とかにも応用できそうだし、いろいろ使い道ありそうだけどなぁ。ま、それは三菱電機が考える仕事か。発表当時は2020年頃製品化と言ってたけど、どうなったんだろうか。

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 たまたま見つけたブログ、管理人は元衛星屋さんで、専門家が解説する、みたいなスタンス。なんだけど、リアクションホイールの説明が「遠心力で姿勢を制御する」とか書いてあって、もにょる。
 似たような例だと、再突入時の摩擦熱問題とか、テレビでよくある遠赤外線信仰とか。

 ほとんど関係ないけど、理系YouTuberの「理系が真面目に計算してみた」とか「検証してみた」系の動画、あんまり理系っぽさ感じないよなぁ。有名曲の歌詞引っ張ってきて批判するだけなら文系の方が得意なのでわ? 理系だったら理系らしく「非現実的な設定をどうやって現実的に考えるか」とかやってほしい。「宇宙だと目を閉じても宇宙線の影響で光が見えることがあるよね。さすがに億千も見えると線量やばそう!」とか。
 100万枚撮りのフィルム? 磁気テープならカセット1個で容量10TB超えるから1枚10MBのデータでも100万枚撮れるよね! ExaDriveだと100TBのSSDもラインナップされてるから5000万画素クラスのRAWデータでも100万枚くらいなら十分入るね!!
 映画フィルムだと上映時間にもよるけど25万コマくらいかなぁ。100万枚にはちょっと足りないけど、マイクロフィルムなら数十倍の情報量があるから、映画用のリールの数分の1の規模感で100万枚撮れるはず。
 YouTubeのコンテンツだと「こんなのできるわけないだろゲラゲラ」のほうが再生数稼げるんだろうけど、なんだかなぁ。

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 飛行機のトラポンの話書こうと思ってたら、ちょうどいいタイミングで分解動画が出てきた。


 トラポンの話、モード1, 2, 3, 4, 5, A, B, C, D, S, ES, UAT, ADS-B、あたりを扱おうとすると、アクをすくう程度の薄っぺらい話でも、かなり長くなってしまう。
 モードAはモード3と同じだけど、全く同じではなくて、モードAで未使用のビットは、モード3ではターゲットドローン用に使われている、とか、このブログ的に面白そうな話題もあるんだけど、モノがモノだけに、ググった程度だとあんまり情報出てこない。
 モードDは結局使われずじまいだったけど、モードBは一部地域で使われてたみたいね。ロッキード・トライスターとか、当時のハイテク機ではモードBに対応したトラポンが積まれてたらしい。
 通信機器の例に漏れず、モード5の機材をテストするための機材、というのも当然売っていて、米軍が同盟国に対しても使用を要求している関係で、日本語のカタログもPDFでダウンロードできたりする。下の方に小さく「ITAR規制対象品だから買いたいならまず許可取ってね」とか書いてあるけど。ベンチトップ1台でTACANとかDMEとかいろいろ対応してるらしい。モード5は1090MHzを使ってるらしいので、近い用途・周波数の通信は一通り対応してるっぽい。

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