2022年9月21日水曜日

小ネタ

 ためしにJPLのエフェメリス(DE440)で太陽系天体の計算。とりあえずJCG互換の係数表を生成するところまでは動きそうな気配が掴めた。


 JCGの係数表から計算した太陽のR.A.と、JPL DE440から計算した太陽位置から生成した係数表から計算し直した太陽のR.A.のグラフ化。2年分。

 のこぎり波状の線がR.A.の値(左軸、h)。JCGの水色はJPLの橙色の下に隠れて見えづらいが。0hから24hの範囲だが、これは24でmodを取って表示している(JCGの計算式では少しレンジがズレる)。

 赤はJPLからJCGを引いた値(右軸、h)で、紺と灰はそれぞれ1ポイント前からの差(右軸、h/day)を表している。JPL-JCGでは0.02h(0.3度)程度の差がある。太陽はおおよそ365日で24hの回転なので0.066h/day程度になる。実際、その程度の値になっている(ΔJPLは0.005下に書いていて、実際にはほぼ重なっている)。

 年の変わり目にステップ状の変化があって、Δでもスパイク状に見えている(JCGもJPLも同様。JCG計算式の関係かも)。


 とりあえず、多少精度は悪くてもJCG互換で太陽や月の位置の係数表を作れることはわかった。ということで衛星撮影アシストソフトもJCG互換テーブルを作って食わせればいいんだけど、最終的には直交座標がほしいわけで、素直にJPLに対応させた。なかなか面倒な作業だった。

 JPLエフェメリスは太陽系重心が基準なので、地球重心に移動させる必要がある。地球重心の場所は直接得られないから、月の位置も求める必要がある。地球の重力に縛り付けられた我々人類としては手間がかかる。

*

 今週は衛星撮影は全く行わなかった。天気が悪かったのもあるし、寒くて外に出るのも面倒だし(しっかり厚着しないと長時間外に出るのはつらい)。

 今週は23日の秋分と26日の新月があるのでそれは撮りたい。計算によるとQZS-1Rが26日の日没後に月食明けのはず。計算が正しいかはわからんが、それを確認するためにもぜひとも撮りたい。とはいえ、天気次第なのでなぁ。


 今シーズンはそろそろ終了かなぁ。これから数ヶ月の時期は寒いので外に出たくない。

***

 小ネタ中の小ネタ


 半導体が無いと家電がクソデカイ、と言うのは同意出来ないなぁ。半導体がなくたって実用的な冷蔵庫は作れるだろ。エアコンや炊飯器も同様。テレビだって昔は真空管で動いていたし、1950年頃(トランジスタが実用化される前)だってハイビジョンテレビは放送されていたわけだし。ただ、エネルギー効率は悪くなる。まぁ、半導体素子が高性能化したのでベクトル制御で消費電力減らしました、みたいなのは半導体素子が進化した世界線だから出てくる話で、半導体素子が無い世界なら違う手段で解決されそうな気もする。あるいは「これが普通」みたいな感じで無視されるか。

 そもそも、半導体素子の無い世界線なら真空管がどんどん微細化していくはず。信号処理用は互換性を捨てて新しいフォームファクタを作って16素子とか64素子をまとめた真空管とか、ロジックICみたいにいくつかの機能を1本にまとめた素子とかが出てくるはず。半導体素子ほど微細化ができないから、演算能力だったり、光速に制限される動作速度だったり、消費電力で性能は落ちるとしても。そういうデバイスしかない世界ならそれが標準なわけで、地球の現在の水準からすれば不便な世界ではあるけど、最初からそれしかない世界なら不便は感じないはず。

 物性としての半導体が無かったとしても、最初からそういう世界なら特に問題は無いはず。生物の誕生とかのレベルで見るとわからんけども。神経伝達とかも電気信号なので、いろいろ不都合は起きそうな気がする。まぁ、物性としての半導体が存在しない宇宙なら、それに応じた知性が生まれるはず。


 「イグ・ノーベル賞」に千葉工業大グループ “つまむ”を分析 | NHK | ノーベル賞2022

 四半世紀も前の実験を探し出してきて日本人に16年連続で賞を与え続けるとかイグノーベル賞の選考委員にも何らかの賞を与えるべきでわ……


 気分転換にパラパラ眺めてるCG系の雑誌、5年くらい前のやつだけど、ゲームの話題で国内大手のスタジオの小物のフォトグラメトリ機材の紹介、めちゃくちゃ手作り感満載の電子工作みたいな設備が紹介されていて面白い。たぶんスタジオのスタッフが秋葉原の秋月とか行って部品買って、ホームセンターで買ってきた材料でフレーム組んで部品並べたんだろうな、という感じの。言っては何だけど、すごい素人くさい電子工作。例えば乾電池を数本組んで配線が全部同じ色(正極・負極の区別をしていない)とか、トグルスイッチが大量に並んでいて1個1個配線されているとか。イカスミパスタみたいだ。1000万本の大台に乗ったゲームでも現場ではこんな感じなんだなー。人間のキャプチャは設備に相当なコストをかけているらしいので、小物班が冷遇されてるだけかもしれないけど。。。


 TDI-CCD、比較的最近のモノだと思ってたけど、PLANET-A('80年代中盤)でも使ってたらしい。0.2rpmでスピンしながらMWで姿勢安定、姿勢変化に同期してCCD画素上を移動させて積分。CCDは153x122pxで視野は2.5x2.5度。0.2rpmは1.2dpsくらいなので、2秒で視野を横切る。積分2秒とのことだから、ラインスキャンセンサ的に使っていたのかな。


 古い宇宙機(特に惑星間)で使われるカノープスセンサ。カノープス自体は赤緯-52.7度ほどなので特に高緯度というわけではないけど、黄道座標に変換すると黄緯-75.8度ほどと、かなり緯度が高くなる。また、太陽を除けば全天で2番目に明るいので、見つけやすい。黄道面に垂直な軸から15度しか離れていないので、視野角が30度程度のセンサがあれば通年で視野内に納めることができる。

 カノープスセンサはPLANET-A等の惑星間に出た探査機で使われたが、SOLAR-Aのような地球低軌道を周回する衛星で使われることもある。S-Aは太陽の自転軸を基準に姿勢を維持するので、高黄緯のカノープスは使いやすかった。


 SOLAR-Aも姿勢制御に8086系を使っているそうだ。MUSES-Aのやつを発展させたものだそうだから、M-Aも8086系を使っていたのかな?


 TRMM、C&DHにMIL-STD-1553を光化した1773を使っているらしい。バス周りは米国製なので、アメリカの人工衛星は1773を使っている(少なくともTRMMでは使っていた)わけか。

 1553は戦闘機等で使われ、評価(トラブルシューティング)されてきたシステムを流用できる利点があるわけだが、1773はそこまで活発に使われていたんだろうか? 幸いにしてTRMMは長寿命だったけど、あまり評価されていないシステムを使うのは怖そうだ。まぁ、TRMM打上げの頃だと1553だって20年くらいしか評価されてないし、計画当初は10年くらいしか実績ないだろうから、それなら1773でも大して変わらん、ということもあるか。

 あるいは、1773は20Mbpsまで通せるらしいので、1553の1Mbpsで足りない場合は他に選択肢は無かったのかもしれない。宇宙機専用に高速なデータバスを作るよりは、すでに試験機で評価済みのバスを使うほうがマシ、みたいな。最近だとExtended-1553みたいに高速通信へ対応させたりもするので、1773の優位性は少なそうだけども。と言うか最近の宇宙機ならSpW使うだろうし。


 昔の衛星の姿勢制御の話で出てきたやつ(70年代中頃)。「将来的にはホイールの代わりにイオンエンジンを使用することで機械的要素を全く含まない姿勢制御が長寿命の人工衛星に採用される可能性もある」という予想。

 ようやくここ数年で全電化衛星が出てきてアンローディングにもイオンエンジン使うようなのが出てきたけど、それにしたってホイールは乗ってるだろうし、今度はIESの噴射効率改善を目的にジンバルに載せたりアームでトルク稼いだりしてるし、可動部レスはまだまだ先な感じだな。結局はガス制御デバイスが必要だから完全に可動部を除くこともできないだろうし。

 オリフィスで少量を流し続けてトルクや推力の制御は加速電圧の制御で行う、みたいなシステムを作れば完全に可動部レスで作れるけど、今度はガス消費量が問題になりそうだ。いくら燃費がいいとは言え、15年とか20年もガスを吹きっぱなしにするには一体どれだけの量が必要になるのか。高電圧系やグリッド類の寿命の問題もあるし。ただ、軌道上燃料補給サービスが実用になった時代を考えると、多少の燃費の悪さは許容しても故障点を最大限排除する、みたいな方向性はできそうな気もする。あるいは故障モードをオープンに限定したバルブを使って、初期はガス流の制御を行い、バルブが壊れたらあとは流れっぱなし、みたいなこともできるか。

 ざっくりした計算で、0.1mg/sの電気推進を16本積んで20年流しっぱなしだと、ガスは1トンくらい必要になる。とんでもない量だな。水銀ならなんとか…… 実際の衛星でどの程度の推力が必要なのか全く考慮に入れていないので、1桁程度の差はあるだろうけども。ただ、16本は冗長系も含めた数だが、そもそも「故障点を排除したスラスタ」というコンセプトなわけで、冗長系が必要ないなら半分で済む。あるいは、オープン故障のバルブを想定するならノミナルで更に数分の1まで減らせるから、わりといいところまで行きそうな気もする。

 ホイール由来の数Hz以上の擾乱が問題になるような観測だと完全可動部レスAOCSはアリなのかな? 低擾乱+長寿命は静止気象衛星とかで便利そうではあるけど、社会インフラとして重要な衛星に使うにはリスクが大きすぎる。使うとしたらHIMAWARI8/9後続の次くらいかなーと言うようなところか。その頃には小型衛星にスラスタ4本積んで吹きっぱなしの連続稼働実績もかなり稼げるだろうし、H-12/13(仮)の頃にはホイールの擾乱もやばいことになってるだろうし。まぁ、打上げは2045年前後くらいの話だろうから、その頃にはもっと高性能なホイールとか、あるいはコンステレーションで全球リアルタイム観測できるから静止衛星なんてイラネ、みたいな話になってそうな気もする。


 JWSTの主鏡の加工に三井精機の横型マシニングが使われたよ

https://www.mitsuiseiki.co.jp/wp-content/uploads/2022/08/NASA%E3%81%AE%E5%A4%A7%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%AF%E3%83%88%E3%82%92%E6%94%AF%E3%81%88%E3%81%9F%E4%B8%89%E4%BA%95%E7%B2%BE%E6%A9%9F_web.pdf

 JWSTの鏡(予備含めて21枚)のブランクを作るために、新しい工場を建設して、そこにMCを8台導入したそうだ。しかも雷が多い地域だから、停電で不良品が発生しないように、加工機と同じくらいのコストを掛けて予備電源を用意したらしい。


 衛星撮影も落ち着いてきたし、というか飽きてきたし、そろそろ違うヤツやりたいなー。久しぶりに電子工作とか。信号処理の復習も兼ねてダイレクトサンプリングAMラジオも作り直したいし。

0 件のコメント:

コメントを投稿